ロシアW杯の悔しさが生んだ覚悟
あまりにも勝つことに貪欲さがないチームに、イラつきを覚えることもあるというが、それももっともだろう。
「勝者のメンタリティは全然足りてないです。言葉ができたら、もうめっちゃ言ってると思いますよ。(キャプテンだった)鹿島のときも、試合中も『なんだ、そんなプレーだったら代われ!』『おまえみたいなやついらねえよ!』とかすごく言っていて、みんなもそんな僕にイラつくんですけど、そこで『やったるわ!』みたいになるんです。そういうのをどんどんここでも入れていきたいなと」
10年前、CLとの両立も影響して3位から一気に17位に転落した2007/08シーズンの翌年、エースを任されたアンドレ・ピエール・ジニャックが24得点と、チームの年間総得点の半分以上を一人でマークする奮闘で、ふたたびトゥールーズは4位に浮上した。ジニャックもその活躍でフランス代表に呼ばれ、彼自身のキャリアもそこから大きく開花した。
昌子の「新加入だから、というのとは関係なく、勝利のメンタリティを注入していきたい」という言葉は実に頼もしい。入団直後から新入りらしさのかけらもないプレーぶりも納得だ。
ロシアワールドカップでのベルギー戦は、昌子のこれまでのサッカー人生で一番悔しい試合だったという。ピッチ上で唯一の国内組だった彼は、「自分が足を引っ張ったんじゃないか」と自分を責め、そこで思った。
「こうなったら僕もそこにいって、同じレベルまでがんばって上って、誰も僕の心配をせず、みんなが100%の力を出せれば、もっと上まで行けるんじゃないか」
「日本が世界に勝つにはセンターバック(のレベルアップ)」とロシア大会で痛感し、周囲の協力を得て実現した海外挑戦。昌子はここトゥールーズで、思う存分、奮闘することだろう。そして、ジニャック以来の救世主になるかもしれない。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
【了】