トゥールーズは野望のないクラブ
が一方で厳しい状態にあるのは、チームの方である。
トゥールーズは、リーグ戦ではなんと8月25日の第3節からホーム戦での勝ち星がなく、26節を終えて15位と、降格圏も遠くない。2月24日の26節、本拠地スタディオンでのカーン戦は、前半ロスタイムに先制を許し、試合終了間際の同点打で、なんとか1-1と敗戦を免れた。
昌子は試合後、「追いつかれた引き分けよりも、追いついた引き分けのほうがポジティブにとらえられる。追いついたことは今の僕たちにとって、数少ないポジティブな要素…」と話したが、デビュー戦のニーム戦(1-0)と、次のフランスカップ戦で連勝したあとは勝ち星がなく、常勝軍団・鹿島アントラーズに身を置いていた昌子にとって、「6試合勝っていない」というのはこれまでにない経験だった。
トゥールーズってどんなクラブ? と、地元の人に尋ねると、まず間違いなく、「野望のないクラブ」という答えが返ってくる。
「会長は、残留さえできれば良い、というスタンスでいるからね」と、年間パスホルダーのサポーターはこぼしていたが、どうやらそれは事実であるらしい。
2001年からクラブの実権を握るオリヴィエ・サドラン会長は、航空会社のケータリング業をグローバルに展開する地元の優良企業のオーナーであり、有能なビジネスマンとして誉れ高い御仁だ。若い頃は3部リーグでプレーした経験もあるくらいだから、サッカーへの情熱も本物。
オーナー就任当時3部にいたクラブを、2年と最速でリーグ・アンへ昇格させると、4年後の2006/07シーズンには3位とTOP3入りを実現し、翌年はチャンピオンズリーグ(CL)にも出場した。しかしここ数年は、順位表の下半分が定位置になっていて、昨季もプレーオフを勝ち抜いてのギリギリの残留だった。
今では会長は、「トゥールーズの人々のために、街にリーグ・アンのクラブを」というところで満足しているため、育成部門には投資して若手は育てるが、彼らはよそへ手放して収益を上げる、というストラテジーを決めこんでいるようなのだ。