監督を追い詰めていくCEOの存在
うまくいっていないという話は、何年も前から耳にしていた。この組織は2000年代前半から複数の派閥が勢力争いを繰り返し、ロッカールームは常に緊張感が充満しているという。それでもチャンピオンズリーグを制したり、プレミアリーグでも優勝したり、実績を残してきた。内部のゴタゴタがエネルギーに昇華されるのなら問題はない。
ただ、直近5シーズンで二度もプレミアリーグの頂点に立ちながら、チャンピオンズリーグの出場権も同じ数だけ逸している。ジョゼ・モウリーニョ、アントニオ・コンテといった名将がその座を追われ、今シーズンもマウリツィオ・サッリ監督の立場が危うくなってきた。
不思議なことに、チェルシーの監督には強化の権限が与えられていない。それどころか、オーナーのロマン・アブラモヴィッチと話し合えもしない。基本的にはマリアナ・グラノフスカヤ(実質的なCEO)が全権を掌握し、人事を進めていく。
ただし、ロッカールームの対立を収める際は選手側につき、監督を追い詰めていくのが彼女の手法だ。コンテ前監督も「グラノフスカヤは聞く耳を持っていない」と、複数のメディアにこぼしていた。
いま、サッリと選手間にただならぬ緊張感が充満していることは、読者の皆さんもご存知だろう。
「追いつかれたり、アドバンテージを奪われたりすると、瞬く間に平常心を失う。こうした問題を解決する手段を私は持っていない」
サッリの発言が選手たちのプライドを妙な形で刺激したのだから、どちらに非があるかは明白だ。プレミアリーグのプレー強度についていけないジョルジーニョに固執する人選も、他の選手のモチベーション低下を招いている。