開幕戦後、久保が語った言葉とは?
長谷川監督が左右のサイドハーフに求めたのは、守備の意識だけではない。攻守の素早い切り替えと上下動を愚直に繰り返しながら、攻守両面で泥臭い仕事を完遂する――清水エスパルス時代、そして2014シーズンに国内三冠を独占したガンバ大阪時代と同じアプローチを頑なに貫いた。
FC東京としては、急がば回れ、という方針のもとで、FCバルセロナの下部組織出身の逸材を育成していた。目に見える結果を優先させて移籍した久保だったが、J1残留へ向けて、勝ち点の取りこぼしが許されなくなったマリノスでの緊迫した日々で、思考回路に劇的な変化が生じている。
「サッカーはチームスポーツなので、オレが、オレが、というわけにはいかない。選手一人ひとりに特徴があるとは思いますけど、チームの勝利が最優先されるなかで、土台となるチームのコンセプトを実践できなければ試合に出られないのは当たり前であり、そのうえで攻撃では自分の特徴をしっかり出して、チームのいいアクセントになればいい、ということをこの1年間で、十代の早いうちに学べたことは一番大きな収穫だと思っています」
史上2チーム目となる3連覇を目指す川崎フロンターレのホーム、等々力陸上競技場でスコアレスドローを演じた23日の開幕戦。右MFの先発を勝ち取り、マリノス時代を含めてリーグ戦では最長となる77分間プレーした後の取材エリアで、久保はこんな言葉を残している。
相手の守護神チョン・ソンリョンを棒立ちにした、右ポストを直撃した41分の直接FK。自陣から仕掛けたカウンターの推進役を高速ドリブルで3度担い、FWディエゴ・オリヴェイラ、FW永井謙佑、そしてMF高萩洋次郎へパスを出した。誰よりもゴールを生み出す可能性を漂わせた。