跳ね上がるゴール期待値
実際、「ゴール期待値」と呼ばれる指標も昨季以上に跳ね上がった。「xG」と略されることもあるが、おそらくあまり聞き馴染みがないだろう。データ分析が一般的になってきた近年、様々なスタッツが収集される中で、勝利するために必要な「ゴール」がどれほど生まれる可能性があるかを評価する指標として注目され始めている。
「ゴール期待値」は、試合の中で放たれた全てのシュートがゴールに変換される確率を割り当てて算出される。例えばシュートが打たれた位置や、シュートの種類、ゲーム状況、アシストの種類、ゴールまでの距離などが考慮されて、1試合の中でゴールの可能性がどれだけあったかを数値化するのだ。
3得点を奪ったガンバ戦、マリノスのゴール期待値は『Wyscout』の統計データに基づくと「3.96xG」だった。22本のシュート(公式記録では21本)を放って10本が枠内に飛んだと記録されていて、実際に3ゴールを奪ったことも考えると「期待値」の高さもうかがえる。
翻って昨季はリーグ戦34試合から1試合平均「1.5xG」と算出されていた。実際には56得点を奪っているから、1試合あたり1.65点を記録していたことになる。期待値を上回ってはいたが、結果的には守備面の拙さが足を引っ張った。
ガンバ戦では2失点したものの、2つとも試合の文脈からある程度切り離された解決可能なもので、なくしていけるミスもある。守備陣のスタッツが向上していることを鑑みても、おそらく失点は減っていくだろう。
攻撃面では「3.96xG」に沿う流れでゴールを決めていくとシーズン終了時には「135点」決めている計算になるので、さすがに今後落ち着いていくだろうが、タイトル獲得のために実際の数字は昨季以上に増やしたいところではある。
チーム内の競争と戦術のブラッシュアップが並行してうまくいっている現状を、いかに長く続けていけるか。ポジション争いは今後も熾烈を極めるだろうし、当然ながら松原もアピールに燃えているはずで、負傷中のタイ代表ティーラトンも復帰してくれば層はさらに厚くなる。開幕戦だけでなくこれからの試合でも、得た成果をしっかりと継続し、課題は改善してチームの財産にしていけるかが、今季のマリノスの成長を左右することになるのは間違いない。
(取材・文:舩木渉、データ提供:Wyscout)
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