『とにかく守備のところで見せてほしい』
試合終了の笛が鳴った。スコアは0-0のままだった。にもかかわらず、スタジアムに詰め掛けた観衆は、まるで大勝したかのような喜びに沸いた。
試合後、ボリス・ショメルス新監督は「私たちのチームが作り上げた試合にとても満足している。私たちは自覚していたよ。情熱を持って守備をしなければならないということをね」と振り返った。
2月18日、冬の透きとおった夜に浮かぶマックス・モーロック・シュタディオン――。
ブンデスリーガ第22節。1.FCニュルンベルクは、ホームにボルシア・ドルトムントを迎え撃った。最下位と首位の直接対決。12日、成績不振を理由にミヒャエル・ケルナー前監督は解任となった。代わって就任したばかりのショメルス監督にとっての初陣は、つまり1部残留を信じるニュルンベルクにとって重要な一歩である。
この転換期の中で、久保裕也は、再びチャンスを掴んだ。ドルトムント戦で久保は、[4-1-4-1]の布陣の右サイドで先発。シュメルス監督からは、「とにかく守備」を求められたという。
「相手もドルトムントですし、僕らがボールポゼッションをする時間はかなり短いっていうのが試合前から分かっていました。『とにかく守備のところで見せてほしい』と、監督から言われていて、それを今日はすごく意識はしました」
そう振り返る久保の言葉からは、CLクラスの相手に圧倒的な劣勢を覚悟しながらも、なんとか勝ち点をもぎ取ろうとするニュルンベルクの覚悟が伝わって来る。