バイエルンにとって厄介だった男こそ…
そしてもう一つリバプールにとってポジティブだったのはロベルト・フィルミーノの働きだ。
同選手は体調面に問題がありバイエルン戦の出場が危ぶまれていたが、この日も3トップの中央で先発出場を果たしている。
フィルミーノは攻撃時に下がってボールを受け、そこからパスを散らす役割を完遂。バイエルンはリバプールのCBに対しレバンドフスキ、ハメス・ロドリゲス、あるいはチアゴ・アルカンタラがプレスを寄せにいくため、フィルミーノが中盤に下がることにより、ハビ・マルティネスと1対1の局面を作り出すことができていた。
そこから前を向けば、フィルミーノの強さは最大限生きる。事実、この日の背番号9はシュート数こそ1本に抑えられたものの、決定的なパスはチームで2番目に多い3本繰り出すなど、持ち味を出すことはできていた。リバプールの攻撃陣は結果的に封じ込まれた形にはなったが、フィルミーノだけは抑えられているという印象はなく、むしろ得点の可能性を感じさせた。
この日は76分にディボック・オリギとの交代を余儀なくされたが、体調面を考慮してのものだろう。サッカーにタラレバは禁物であることを承知で記すが、フィルミーノが最後まで出場していれば、0-0という結果は変わっていたかもしれない。
フィルミーノの意外性のあるパスと周りを確認しながらドリブルし、サラーやマネを確実に生かせる頭脳的なプレーは、バイエルンにとっては厄介なものになるはずで、2ndレグでもカギを握るのは背番号9ということになるかもしれない。
2ndレグはアウェイでの難しい試合になる。バイエルンは猛然と前に出てくるだろうし、リバプールの守備陣は最後まで集中しなければならない。ただ、最も肝心なのは攻撃陣の働きだ。アウェイゴールを1つでも奪えることができれば、形勢は一気にリバプールに傾くことになるだろう。そういった意味ではバイエルンよりリバプールの方が思い切って前に出ることができるはずだ。
クロップ監督も試合後、「最悪の結果ではない」と話しているがその通りだろう。むしろ0-0という結果は、バイエルンをより難しい立場に置かせたかもしれない。
(文:小澤祐作)
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