日中は会社勤務も。社会人経験がプラスに
トップチームのロッカールームが入っている「いわきFCパーク」の2階には、英会話教室もテナントとして入居している。午前中に練習で汗を流し、午後に同じ敷地内にあるドームの物流センターで約4時間勤務。夕食の前後には居残りの筋トレにも励む多忙なスケジュールのなかで、新たに芽生えた夢に対する自己投資も貪欲に追い求めていく。
「高校から社会に出るうえで、働くことを経験したほうが自分の今後にも生きると思うので。練習環境はJ1どころか日本のトップクラス、いやヨーロッパ級だと思うし、いまとなってはJクラブへ行くよりも、自分を徹底的に鍛えられるいわきFCを選んだことは本当に正解だったと思っています」
ネクスト・ジェネレーション・マッチでは、1点を追う試合終了直前に同点ゴールを決めた。力強いドリブルで抜け出したFW西川潤(神奈川・桐光学園2年)が左足を一閃。強烈なシュートが相手ディフェンダーに当たってコースを変え、ゴールに吸い込まれる直前でバスケスが押し込んだ。
「ほぼ西川のゴール。最後に触ってしまってちょっと罪悪感があったので、試合後には『申し訳ない』と西川に言いました」
照れ笑いを浮かべたバスケスは、実はまだいわき市内への引っ越しも済ませていない。今後は卒業式が3月1日に行われ、高校選抜の最終メンバーに残ればヨーロッパ遠征も待っている。
なかなか落ち着けない日々が続くなかで、重厚な筋肉の鎧を身にまとい、心技体の成長スピードをさらに加速させ、いずれは海外へチャレンジし、母国チリの代表としてプレーする夢はどんどん膨らんでいる。
(取材・文:藤江直人)
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