ピッチ内だけではない長友佑都の価値
ただ、左サイドバックに関して言えば、依然として長友が突出した存在感を誇っている。今大会も6試合に出場し、28日の準決勝・イラン戦で対面に位置したアリレザ・ジャハンバフシュに仕事らしい仕事をさせず、1対1の守備で絶対的強さを示した。
2010年南アフリカ、2014年ブラジルワールドカップに参戦した20代半ばの頃のような攻撃参加とゴールに直結するピンポイントクロスを見せる場面は少なかったものの、彼がチームにもたらした安心感は見逃せない点だった。
今大会のメンバーだった佐々木翔も17日のウズベキスタン戦に1試合に出場し、競り合いの強さという武器を示したものの、国際経験ではどうしても長友より劣る。森保監督にとってはサンフレッチェ広島時代の秘蔵っ子ではあるが、佐々木を大一番で起用する覚悟は持てなかったようだ。
他の左サイド要員を考えてみても、昨年11月シリーズに招集した山中亮輔や東京五輪世代の杉岡大暉のような有望選手がいるが、すぐに長友と取って代わるレベルに達していない。
長友本人は「(森保)監督自身もベテランの僕とかを今後、どうするかを考えると思いますよ。これがもしかしたら最後になるかもしれない、僕の代表が」という強い危機感を募らせたものの、いきなりドラスティックな世代交代が行われるとは考えにくい。仮に森保監督がそういう方向性を示すのなら、絶対反対と言うしかないだろう。
長友が日本代表にいる価値はピッチ内だけではない。毎日、堂安と冨安とともに練習前のボール回しをし、若手を盛り上げ、時には苦言を呈するなど、「ピッチ上の指揮官」として八面六臂の活躍を見せていたのだ。
長友がいるだけでチームの雰囲気が明るくなり、選手たちが和む。槙野や乾もそういった役割を精力的にこなしていたが、長友がいるからこそやりやすかったはず。