チームが誇った一体感の秘密
選手たちが口々に「このチームには一体感がある」と繰り返していたのも、森保監督なりのチーム作りがあっただろう。
サンフレッチェ広島時代を知る佐々木翔は「今なかなか試合に絡めていない状況でも、日頃のプレーから『見られているな』というのを感じますし、そういった部分で、プレーヤーとして少しでもチャンスを掴んでやろうという気にはなりますよね。(森保監督から)声をかけてくれる時もありましたし、そうじゃない時でも『お前ら気を抜いたら出さねえぞ』というのは感じますからね。まあ感じ方は人それぞれですけど、僕はそれくらい存在感のある監督だなと感じます」と話していた。
森保監督は練習中、基本的に遠くから全体を見渡せる位置に立って、ほとんどのメニューの進行をコーチ陣に任せている。報道陣に公開される冒頭15分間、あるいは試合翌日の控え組の練習のみしか見ることはできないが、大抵の場合、森保監督はフィールドプレーヤーもGK練習も視野に入る位置に静かに佇んでいる。
それでも…いや、だからこそ「見られている」という感覚になるのだろうか。練習の合間や前後には選手たちと談笑する姿もあり、「スペインに行って監督との距離は縮めてもいいんだなって感じましたし、森保さんもそれを求めているとまでは言わないですけど、ウェルカムな人なので、すごくコミュニケーションが取りやすかった」と乾が言うように、ピッチ外での選手との対話も欠かさなかった。
チーム内の競争力と結束を維持できていたことが、吉田麻也の「非常にいいチームで、いい監督のもとで非常にいいグループで戦ってこられていると思いますし、1ヶ月近く一緒にいますけど、もっともっと一緒にプレーしたいなと感じる仲間たち」という発言にもつながった。ベンチメンバーも含めた一体感は記者としてチームを外から見ていてもはっきりと感じられた。
こうしたプランニングとチームビルディングが功を奏した一方で、試合中の采配には課題が見て取れた。森保監督自身が言い続けてきた「対応力」は、十分に発揮できていたとは言い難い。
他国の記者からも「2004年のEUROでのギリシャ代表のようだが…」と質問が出るほどの守備的な傾向もあった。ポゼッション志向の強い日本代表にしては珍しく、相手に主導権を渡して勝つ試合もあった。先に点を取られて苦しい流れになる試合もあった。