負傷者続出、アクシデントの連続で…
森保一監督 評価:C
森保一監督は、あまり多くを語らない。日本代表監督として出席する記者会見では、1つの質問に対して丁寧に回答するものの、表面的な内容がほとんどで、核心を突くような言葉は少ない。
そのためこれから書き記すことは森保監督の本意から逸れているかもしれないことをご了承いただきたい。優しさと厳しさを併せ持ち、人間関係や礼節を重んじる指揮官は、おそらく何か重要なことを隠している。我々はこうやって原稿を書くにしても、この目で見たありのままか、あるいはそこから推測できることまでしか言及できない。
日本代表監督として初めて挑んだ公式戦、AFCアジアカップ2019は決勝でカタール代表に1-3で敗れ、準優勝に終わった。国内合宿も含めれば1ヶ月を超える長期の活動だったわけだが、優勝までの道筋を見定めていくにあたって、森保監督はメンバー選考から誤算続きだっただろう。
今大会の日本代表は、昨年12月12日に23人のメンバーが発表された段階でGKを除いて各ポジションにおおむね2人ずつが選ばれていた。しかし、負傷離脱者が相次ぎ、本来のプランはその度に修正を迫られることになった。
FWの2番手候補だった浅野拓磨が招集を辞退し、武藤嘉紀を追加招集。さらに合流直前の試合で負傷してしまった10番の中島翔哉に代わって乾貴士、練習中に負傷した守田英正の代役には地元UAEでプレーする塩谷司が選ばれた。
大会中にもGK東口順昭が腰を痛めて一時離脱、エースFW大迫勇也が右でん部の痛みを再発させてグループリーグ第2戦以降しばらく欠場を強いられた。グループリーグ最終戦に出場した青山敏弘はひざを痛めてチームを離れなければならなくなった。極めつけは準決勝での遠藤航の負傷。こうして相次ぐアクシデントをも乗り越えながら日本代表を決勝まで導いたプランニングの手腕は卓越していた。
特にコンディション調整には細心の注意が払われていた。ほとんどの選手が冬の寒い場所から気温差が20度近くあるUAEにやってきているため、気候への順応は不可欠な課題でもあった。大会序盤は練習量もある程度セーブしながら徐々に選手たちの体を暑さに馴れさせていき、必要以上の負担がかからないような絶妙な配慮が行き届いていた。
シーズンオフ中のJリーガーとシーズン中の海外組とのコンディションのばらつきを最小限にし、チーム全体のピークを準決勝や決勝に設定する。優勝するための準備は徹底していた。その証拠に、決勝まで7試合を戦っても相手に「走り負けた」と感じた試合は1つもなかった。どんな展開でも先に運動量が落ち始めるのは対戦相手の方。そういった部分に指揮官が大会中、何度も繰り返してきた「最善の準備」の成果が現れていた。