カタール側の主張は?
実際、UAE側がAFCに提出したのはアル・ラウィの母親がイラク生まれであることを証明するものだったという。またUAEの『イティハド』紙は、アル・ラウィの10歳の頃の在留許可証(パスポートではない)とイラクのパスポート、アルモエズ・アリと母親のパスポートの画像を公開している。
例えばアルモエズ・アリの母親のパスポートはドーハにあるスーダン領事館によって発行されたもので、カタールではなくスーダンのシャンディという街の生まれであることがわかる。UAEサッカー連盟はさらにイラクやスーダン当局によって発行された証明書なども含めて9つ以上の証拠を揃えてAFCの懲罰委員会に提出したようだ。
これらの証拠によってアル・ラウィはイラク人の父ヒシャム・アリ・ムサ・アル・ラウィとイラク人の母アマル・アドナンの間に生まれ、祖父のナジム・ナジムもバグダッド生まれだったことが判明。またルーツはシリアにあり、2007年に発行されたカタールのIDでも家族がイラク生まれであることが証明されているとのこと。
アル・ラウィは2017年2月に帰化手続きが完了するまでカタール国籍でなく、家族は別の湾岸諸国に居住していたとも『イティハド』紙は伝えている。同選手には世代別代表歴もあり、2017年以前も「カタール人」としてプレーしていたため、疑惑はさらに深まる。
アルモエズ・アリに関しては2017年に発行されたカタールのパスポートで出生地がスーダンだったことが判明。先述の通り母親もスーダン人で2015年に発行された2020年まで有効のパスポートが存在していると見られる。
告発の発端を担ったマッキンタイア氏も「アル・ラウィの母親がイラクで生まれたことを示す家族記録と身分証明書のコピーを見たことがある」とツイートしており、おそらくこれらも今回UAE側が提出した証拠に含まれているだろう。
この件についてカタールサッカー連盟の職員に取材したところ、「アルモエズは幼少期にスーダンからカタールに移住してきた」とは認めたものの、「国籍取得や帰化のプロセスは法律で様々な条件が定められており、何ら問題ない。我々は正しい手順を踏んで手続きしている」と不正を真っ向から否定した。
中東の記者たちにも「今大会、すでにAFCに登録されてプレーできているのだから問題ないだろう」と話す者が複数いた一方で、匿名を条件に取材に応じてくれた某国の記者は「マッキンタイア氏の主張を信じたい。だが、今のサッカー界におけるカタールの立ち位置を考えるべきだ。3年後にワールドカップを控え、FIFAやAFCと非常に近い立場にいる。そういうことだ」と含みを持たせながらも不正の存在を匂わす発言を残した。