“犬猿の仲”UAEが掴んだ数々の証拠
アルモエズ・アリとバッサム・アル・ラウィ(今大会はバッサム・ヒシャムの名で登録されている)のケースでは、2人とも根っからの「カタール人」ではなく、国外にルーツを持っていることが大きな問題になっている。帰化選手であれば18歳以降の「5年間」の継続居住条件だけでなく、自身や家族も含めた出生に関する条件が満たされていないのではないかと指摘されているのだ。
前者は1996年8月19日生まれの22歳で、これまで生誕地の情報が錯綜していたが、取材によってスーダン生まれのスーダン人だったことが判明した。後者は1997年12月16日生まれの21歳。父親が1990年代にイラク代表として活躍した選手で、本人もイラクの首都バグダッド生まれである。後ほど詳述するが、アルモエズ・アリの出生時の国籍はスーダン、同様にアル・ラウィの出生時の国籍はイラクだったことになる。
この疑惑は当初、マッキンタイア氏の母国オーストラリアに本拠を置く『FOXスポーツ』しか大々的に取り上げていなかった。現場で大きなトピックとして浮上してきたのは、カタールが国交断絶中のUAEに準決勝で対戦するとなった頃から。
そして今回、カタールは開催国UAEを破って決勝に進出。日本代表とのタイトルマッチ前日に行われた記者会見では、記者たちから何度もアルモエズ・アリとアル・ラウィの国籍並びに代表資格問題について質問が飛んだ。
カタールのフェリックス・サンチェス・バス監督は「何も問題はない。関係のないことだし、明日の試合に集中する」と深く言及することは避けたが、関心がたかまっているのは間違いなかった。そしてUAEサッカー連盟はこの問題で決勝前日に新たな動きを見せる。
地元紙『ザ・ナショナル』などによれば、UAEサッカー連盟はアジアサッカー連盟(AFC)に対してアルモエズ・アリとアル・ラウィの代表資格が適正ではないとして抗議したという。すでにUAE側は0-4で敗れた準決勝のカタール戦直後に訴え出る方針を示し、証拠提出などのために48時間の猶予を与えられた上でのアクションだった。
議論の発端を作ったマッキンタイア氏も「大ニュース!」と即座に反応した。彼は証拠が何だったかについては「言えない」としながらも、疑惑が出始めた頃に「重要なものを見たことがある」と話していた。
ツイッターには「西アジアの信頼できる情報源から」のものとして、アル・ラウィの母親が「カタール生まれ」というカタール側の主張を崩すことのできる証拠の存在を示唆していた。アルモエズ・アリについても同様に母親の出生証明書がカタール側の盾になっていたが、実際にはそれらの文書の有効性に疑問があることもマッキンタイア氏は指摘していた。