自らの地位を確立した「準備」への意識
トゥヘル監督が事実上の解任となり、ペーター・ボシュが新監督となった17/18シーズンは、左肩の脱臼で出遅れ、なかなか定位置を掴めなかった。成績不振でボシュ監督が解任となった後、ペーター・シュテーガー暫定監督の下でレギュラーに返り咲いたのも束の間、左足首を負傷。ロシア・ワールドカップを前に復帰できたのは、5月12日に行われたTSGホッフェンハイムとの最終戦だった。
そして今季、ルシアン・ファブレ監督の下では、与えられたチャンスで結果を残せず、足首の負傷も重なり、スイス人指揮官の嗜好するスタイルに適合できず…構想外となった。
これまでドルトムントで216試合に出場し、60ゴール55アシストという数字を残した香川。単純計算で2試合に1回は決定的な仕事をしてきたことになる。特に帰還してからの4シーズンが、前述のように決して平坦ではなかったことを振り返れば、その数字の凄みも理解できるだろう。
そもそもチャンピオンズリーグの常連であるビッグクラブで、レギュラーを獲得すること自体が簡単ではない。振り返ればドルトムントの試合の後で、「準備」が香川の口癖だった。私生活も含めてストイックにサッカーに打ち込んできたからこそ、茨の道の中でも、確固たる結果を残すことができたのだろう。
そして、そんな「シンジ」に対して、無数の黄色いファンたちは、「家族」の一員のように温かく見守り、喉の奥から声を振り絞ったのだ。
だが、少年が青年に、青年が大人へと成熟すれば、いつか「家族」の下を離れる時がやってくる。もう香川は、ヨーロッパにやってきたばかりの、怖いもの知らずだった頃の香川ではない。
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