敵の歯車を狂わせた半端ない一撃
事実上の決勝と言われた28日のAFCアジアカップ2019準決勝・イラン戦。ここまで5戦12得点無失点という圧倒的強さで勝ち上がってきた完成度の高い集団に、日本は苦戦を強いられるというのが一般的な見方だった。
ところが、試合が始まってみると、攻撃のリズムがこれまでまるで違う。柴崎岳からボールを受けた堂安律がDFのギャップを突こうとした大迫勇也に出したスルーパスが惜しくも阻まれた前半7分のシーンを筆頭に、前線アタッカー陣が小気味いいほど連動してゴールに向かっていく。
柴崎が2列目を追い越す動きを見せた前半12分の場面、長友佑都が左サイドを駆け上がって南野拓実に折り返した前半13分のビッグチャンスにしても、起点を作っていたのは背番号15。彼の巧みなポジショニングで、堂安、南野、原口元気の3人が完全に生き返ったのだ。
日本は前半こそスコアレスで折り返したものの、後半に入ると大迫の鋭さは一段と増す。それを象徴したのが、後半11分の先制点の場面だろう。柴崎のタテパスを大迫が確実にキープしDF裏にはたくと南野がゴールへ突進。DFカナーニにチャージを受けて倒された。
南野はここで諦めることなく左サイドに転がったボールを追い、中央へクロスを供給。ここに飛び込んだ絶対的エースが頭を合わせてネットを揺らすことに成功する。敵の歯車を大きく狂わせた半端ない一撃は、南野の献身性と大迫の周りを生かす仕事が絡み合って生まれたものだった。