サラが伝えたハリル監督への感謝
「これまでのキャリアでいまが一番絶好調です」と、サラは指揮官へ恩を感じていた。
ハリル監督にとっても、サラは19位にいたチームを一時10位まで上げてくれた、頼れる戦力の一人だった。
別れの挨拶に訪れた日も、ベンチに座って二人でゆっくり話しこんだという。その時サラは、恩師に何度も、「ありがとうございました」とお礼の言葉を述べたのだそうだ。
「彼は私を信頼してくれて、自分のことをいろいろと話してくれた。あんな選手はこれまでいなかった。私の人生にはいろいろと辛いこともあったが、スポーツ界での出来事で、これほど辛いことは他にない…こんなことが起きてしまうなんて…あまりに酷すぎる…」
監督は選手たちを従えて、トレーニング場に駆けつけたサポーターたちの前で、「いまクラブは、かつてないほど団結力を必要としています。この苦しい時、どうか我々とともに戦ってください。応援に感謝します」とスピーチ、大きな拍手で讃えられた。
「辛いけれど、人生は続いていく…」
はっきりと事件が解決するまで、望みは捨てないと指揮官は語り、哀悼の意の述べることや、サラに黙祷を捧げるようなことはしないと明言した。監督の言うとおりだ。まだなんの確証もない。
いまはサラと、イボットソン氏のために、ただひたすら祈りたい。
(文:小川由紀子【フランス】)
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