「サラの声の後ろから聞こえるエンジン音が普通ではないようだ」
サラはアルゼンチンの家族にも、音声メッセージを残している。
「弟たち、元気かい? 僕は疲れて死にそうだ。今日はナントで一日中、やることが山ほどあったから。いまは飛行機の中にいるけれど、なんだかいまにもバラバラに壊れそうな機体だよ! これからカーディフに飛んで、明日から新しいチームメイトたちとトレーニングを始める。
さて、どうなるかな。そっちは変わりない? 1時間半以内に僕から連絡がなければ…誰か探しに来てくれるんだろうか…まあ、なんとかなるだろう。あ~なんだか怖いな~」
頼りなげな小型飛行機に、サラが少なからず恐怖を感じていたことがうかがえる。現在、事故原因を捜査中の航空専門家もこのメッセージを聞いて、「サラの声の後ろから聞こえるエンジン音が普通ではないようだ」とコメントしている。
このフライトは、サラの移籍をとりまとめたエージェントが用意したものだった。
ジョーイ・バートンなどを顧客にもつウィリー・マッケイ氏は、これまで何度となく、自分や選手たちの送迎を依頼している熟練パイロットに今回もサラの送迎を依頼した。
直線距離なら1時間ほどだが、正規便を使うとカーディフからナントまでは5、6時間はかかる。スピードがものをいう現代のサッカー界では、小型プライベートジェットでの移動は日常的だ。
しかし当日、担当することになったのは、別のパイロットだった。当局は現在、サラとともに消息を絶っているパイロットのイボットソン氏が、商業用の操縦ライセンスを有していたかなどを捜査しているというが、送迎についてサラとの連絡係となったマッケイ氏の実子ジャックも、酷くショックを受けているにちがいない。ジャックはカーディフ・シティの選手であり、サラの新たなチームメイトだ。
公開されているサラとジャックの会話の中では、「送迎の手配をありがとう。費用は?」と尋ねるサラにジャックは、「いらないよ。僕にたくさんゴールさせてくれればいいって父さんが言ってるから」と答え、「よし、一緒にたくさんゴールを決めよう」とサラもともに活躍することを誓っている。