移籍問題が予期せぬ方向へ
個人的にも、ショックという言葉では表せないほどの衝撃を受けている。
年末最後のリーグアンの試合で、パルク・デ・プランスでPSGと戦うサラの元気な姿を見たばかりだった。試合後の会見の焦点は、前半戦だけで12得点をあげたチームの得点王の移籍問題だった。
ハリルホジッチ監督は、「サラは元気にバカンスに旅立った。そして31日に戻ってくる。いま言えるのはそれだけだ」と、サラ離脱の噂をはねのける姿勢を見せたが、ナントのヴァルダマー・キタ会長は、クラブ一の注目株をカーディフに手放すことを決めた。
サラは3年半前、ボルドーから推定100万ユーロ(約12億円)で獲得した選手。カーディフはその彼に、同クラブ史上最高額の約1700万ユーロ(約21億円)を提示したというから、会長にとって断れるオファーではなかった。
しかしハリル監督は、この移籍を推し進めた会長に信頼を失い、「次のアンジェ戦は自分が指揮をとるが、その後は正直わからない」と、辞任の意思さえ覗かせていた。
それが一転、予期せぬ展開となった…。
ナントはサラが消息を絶った翌日のトレーニングをキャンセルし、23日(水)に予定されていたフランス杯の試合と、27日(土)のリーグアン、対サンテティエンヌ戦を延期した。
火曜の夜には、ナント市の中心にあるロワイヤル広場に1500人ものサポーターが集まり、凍てつく寒さの中、サラの無事を願って彼に捧げるチャントを歌い続けた。サラの写真や思い出の品を手に祈る人たちの目には、涙が浮かんでいた。
チームメイトたちの衝撃も計り知れない。とくに、サラを空港まで送った兄貴分のDFニコラ・パロワは、直前までメッセージをやり取りしていた一人だった。
頼りなげな小型飛行機を見てサラは、「もし僕がいなくなったら、どこを探せばいいかすぐにわかるよ」という皮肉めいたジョークのメッセージを、泣き笑いのアイコンとともに送ってきたという。その後実際に彼からの返信が途絶えた時、パロワは不穏な思いを抱いた。