名門再建へ重要なのは?
ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督のもと、組織守備には一体感が出ている。この日もナポリの攻撃陣に対し、DF陣は粘りを見せた。アレッシオ・ロマニョーリとマテオ・ムサッキオのセンターバックは好調のアルカディウシュ・ミリクをきっちり挟み込み、前後左右に動いてくるドリース・メルテンスに対しては中盤が下がって対応する。左サイドから仕掛けるロレンツォ・インシーニェに対しても、ダビデ・カラブリアが粘り強く喰らい付いていた。
そのように後方の守備の安定が保たれるのは、前線の選手がよく守っているからでもある。クトローネは果敢にプレスを掛け、ハカン・チャルハノールや新加入のブラジル人ルーカス・パケタまで勤勉に守備へ走る。守備から攻撃への切り替えも素早く、ナポリのプレスをかいくぐってカウンターでチャンスを度々作っていた。
ただ当然、課題も露呈していた。守備にエネルギーを費やしたことが災いしてか、ゴール前でのプレーの精度がことごとく欠けていたのだ。エリア内で良い形で飛び出しておきながら、数度ビッグチャンスをフイにしていたインサイドMFのフランク・ケシエはその象徴と言えた。
だがガットゥーゾ監督は、それも成長へのプロセスだと捉えて我慢する。「あれだけ守備をして15-20ゴールを決められるようなら今頃バロンドロールだ」と試合後の記者会見でケシエを擁護しつつ、「どのようにプレーを組み立てていくかは確かに課題だが、我われは一つのチームになっているところだ」と強調した。
黄金時代に組織守備の重要な部分を担っていたクラブのOBは、再建のためにはチームとしての一体感が重要だと説いているのだ。
ガットゥーゾ自身は前経営陣が選んだ指揮官で、かつてはレオナルドとの確執も噂されていた。首脳陣の主張がそれぞれ異なる中で彼の立場もまた異なるが、ミランを再建したいという熱意はそれぞれが有している。彼らの動きが一体化した時、名門の再建は本格化していくのかもしれない。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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