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アジア 6年前

ホームレスからアジア最強守護神へ。日本代表に立ちはだかるイラン代表GKの驚くべき実力

text by 舩木渉 photo by Getty Images

驚異的な成績。日本のアジア制覇を阻む最大の壁に

アリレザ・べイランバンド
オマーン戦でもPKをセーブ。アリレザ・べイランバンドがいればPK戦で勝ち目なし?【写真:Getty Images】

 21歳だった2013/14シーズンにナフト・テヘランで定位置を確保すると、2014年4月にはイラン代表から初招集を受ける。ブラジルワールドカップでの23人枠入りは逃したものの、翌年のアジアカップではカルロス・ケイロス監督に再招集され、大会直前の2015年1月4日に行われたイラク代表との国際親善試合でA代表デビューを飾った。

 初のアジアカップは控えGKとして見届けることになったが、同年6月のロシアワールドカップ予選のグアム戦で2キャップ目を記録すると、同11月に再びチャンスを得て一気に正守護神の座を奪取。べイランバンドがイラン代表のゴールマウスを守ったこれまでの31試合で、公式戦の敗戦はロシアワールドカップのグループリーグ第2戦・スペイン戦のたった一度だけ。敗戦そのものも3つしかない。

 2016年に移籍したペルセポリスでは現在までリーグ戦62試合に出場し、わずかに27失点。クリーンシートは41試合もある。イラン代表でも通算31試合のうち19試合がクリーンシートと、まさに無敵の守護神なのである。

 今回のアジアカップでは5試合全てに出場して未だに無失点。恐るべきハイパフォーマンスでイラン代表の守備に安定をもたらしている。石を投げて飛距離を競う「ダル・パラン」という伝統的な競技で幼少期に培った異次元の強肩も健在だ。

 2014年にトラクター・サジとの一戦で見せた約75mのスローインでのアシストは今でも語り草だが、今では同じような飛距離をコンスタントに出すことができ、今大会でも決勝トーナメント1回戦のオマーン戦で前線の味方にピタリと合わせる脅威の投球を見せた。

 日本代表のGK東口順昭は「カウンターのリスク管理は特にしとかなあかんと思います。一発の精度の高いスローインで、蹴るより投げる方が精度が高いので、そこのリスク管理は集中して、繊細にやらなあかんと思う」とべイランバンドの長所に警戒心をあらわにしていた。28日の試合では1失点が命取りになるだけに、得意な形をできるだけ出させないようにしなければならない。

 ホームレスからアジア最強守護神へ。あまりにハードな人生を歩んできただけあって、精神的にも非常にタフで隙がない。イランには個人能力の高いフィールドプレーヤーも揃っているが、何より権田が語るような1つひとつのプレーで勝ちを引き寄せられるGKの存在価値は高い。日本代表はこの巨大な壁をいかに乗り越えるか。べイランバンドの牙城を突き崩さなければ、2大会ぶりの決勝の舞台は見えてこない。

(取材・文:舩木渉【UAE】)

【了】

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