イラン戦で勝利への突破口を開けるか
28日に対戦する準決勝の相手・イランは、1人の力だけで崩しきれるようなチームではない。カルロス・ケイロス監督が2011年から長い時間をかけて熟成させてきた組織力は、新体制発足直後の森保ジャパンとは比べ物にならない。だからこそ、日本攻撃陣はコンビネーションで崩すことを考えていく必要がある。今回の後半にその方法論を模索し、トライする機会を得られたのは、1つの前向きな材料と言っていいだろう。
ベトナムの運動量低下、1点のビハインドを追いかけるために4バックに変更してリスクをかけてきたことなど、もちろん日本にとって追い風となる要素はあった。それを差し引いても、森保監督期待の若手のホープが浮上のきっかけをつかんだのは大きい。
9日の初戦・トルクメニスタン戦の反転左足弾以来、3試合も得点から遠ざかっていたこともあって、堂安はここまで波に乗り切れず、本来の輝きを失いがちだった。自身のパフォーマンスに納得していなかったせいか、メディアに対してほとんど口を開かなかったり、不機嫌そうな様子を見せることも幾度かあった。
そうやって苦しみながらも今大会2点目を奪い、周囲とも特長を理解し合い始めたことで、トンネルから抜け出せそうな雰囲気は高まってきた。そこは森保監督にとっても喜ばしい点だ。
イラン戦はサウジ戦のように守備負担が増える可能性が高いため、ベトナム戦の後半ほど攻めにはいけないかもしれない。そんな苦境に直面しても、点を取って勝たなければ先に進めないのがアジアカップだ。
得点の手段はPKだろうが、リスタートだろうが何でも構わないが、前段階として相手に脅威を与えるようなプレーを見せることが肝要だ。欧州ビッグクラブへのステップアップを目論む堂安にとって、屈強な男たちが強固な守備を形成するイランは最高の試金石。ここで勝利への突破口を開くことができれば、彼自身のA代表、そしてクラブでのキャリアも大きく変わるに違いない。
自らの左足でベトナムから白星をもぎ取り、準決勝への道を開いた20歳のレフティは、果たしてイランという高い壁をどう乗り越えるのか。次戦は堂安律と新生ジャパンにとっての重要なターニングポイントになる。
(取材・文:元川悦子【UAE】)
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