日本代表選手は適応できるのか?
先に述べた通り、日本代表の試合がアジアカップでは初めてのVARの対象になっている。槙野智章は自身もロシアワールドカップで経験しているVARについて「リーグで導入していて経験ある選手はたくさんいます。ディフェンスにとって注意しなければいけない点は数多く増えてくると思います。できるだけゴール付近でファウルをしないことと、かといってフェアに戦いすぎるとボールも奪えないので、そこらへんのラインをしっかり見つけなければいけない。ハードに戦うところはやらなければいけないですけど、こちらも攻撃のところではチャンスだと思いますので、うまく使っていければ」と話していた。
現在ヨーロッパではドイツやオランダ、スペイン、イタリアなどの1部リーグでVARが導入されており、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグでも今季の決勝トーナメントから採用が決まっている。イングランドではプレミアリーグへの導入には至っていないものの、リーグカップではすでに運用されている。アジアではオーストラリアのAリーグやUAEリーグなどで導入済み。Jリーグではすでに何度かテストが行われ、今季からYBCルヴァンカップやJ1参入プレーオフでの試験導入が見込まれている。
つまり日本代表では原口元気や堂安律、乾貴士、酒井宏樹、塩谷司、柴崎岳、大迫勇也といった選手たちが日常的にVARのある環境でプレーしており、アジアカップでの適応に問題はないはず。彼らが周りのJリーガーなどにも経験を伝えていくこともでき、他国よりも大きなアドバンテージがあると言えるだろう。
また、森保一監督は「VARがあってもなくても、我々がやることに変わりはないと思っています。選手にはフェアプレーの精神を持って試合に臨み、プレーしようと言っています。試合の中でVARで再確認しなければいけない局面が出てくるかもしれませんが、そこはルールに従って、我々はやるべきことをしっかりやり続けることに集中してやっていきたい」と述べていた。
VARが最終的な判定を左右するものではなく、あくまで「再確認」であり、主審に助言を与えるものにすぎない。ロシアワールドカップにもコーチとして帯同した指揮官がそのようにルールを深く理解していることもプラス要素になる。
ロシアワールドカップでは実に37台もの複数種類のカメラが様々な角度から試合を記録し、ピッチ上の一挙手一投足をつぶさに見つめていた。映像に残らないものはないほど監視の目が光り、もはやゴール前での反則は見逃してもらえない。
日本代表の試合の中でVARの介入が必要になるような場面が出ないことを祈りたいが、起きてしまえば受け入れて従うしかない。とはいえそういったケースに直面しても正しい判断が下せるよう、我々のような観戦する側もルールを正しく理解しておくことが重要ではないだろうか。
(取材・文:舩木渉【UAE】)
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