VAR介入の際のルールとは?
では、実際に運用されるにあたってのルールを確認していく。まず原則として最終的な判定はピッチ上の主審が下すものであり、VARは明らかな誤審が疑われる場合に主審に助言を与えるのみであることは承知しておかねばならない。
「最小限の介入で最大の利益を」がVARの理念で、常に映像を確認してはいても、それぞれの判定に介入するわけではない。試合の流れをできるだけ止めず、より正確な判定を下すにあたってのサポートをするためにVARは存在する。あくまで「アシスタント」であり「ビデオ判定」そのものではない。
VARの介入の対象となるのは、以下の条件に当てはまるケースのみだ。
1:ゴールかノーゴールか
2:PKに値するか否か
3:一発退場に値するか否か
4:人違い
これらを見て分かる通り、VARの力が発揮されるのは勝敗を決定づけるような場面ということになる。2枚目のイエローカードによる退場判定が覆ったり、フリーキックの判定に影響が出ることはない。
今回のアジアカップの決勝トーナメント1回戦まででは、日本対オマーンで原口元気がPKを獲得したプレーや、同じ試合の前半終了間際にオマーンの選手が放ったシュートを長友佑都がブロックしてハンドが疑われた場面、オーストラリア対シリアで後者にPKが与えられたプレーなどにVAR介入の可能性があった。
もしVARで映像を確認していたら、原口のPK獲得は認められずフリーキック相当とみなされていたかもしれないし、長友はハンドを取られてオマーンにPKが与えられていた可能性が高い。オーストラリア戦のケースでは、シリアの選手が味方の足につまづいて転んでいたことが判明してPKは取り消されていただろう。
こうしたVARの介入がある場面では主審が指で長方形のジェスチャーをすることがある。これはVARでの確認をすることを示すもの。
ちなみにVARはテニスやバレーボールなどに見られる「チャレンジ制度」とは違って選手やスタッフが介入を要求することはできず、仮に選手が指で長方形を作るジェスチャーなどで過度に要求すれば警告の対象となる。
また、VARによる助言を受ける際、しばしばピッチ上で主審が直接モニターを使って映像の確認を行い、判定の参考にする作業がある。これは「オン・フィールド・レビュー」と呼ばれるが、必ず行わなければいけないものではなく、オフサイドなどVAR室で映像を見れば明らかに正誤がわかる反則に関してはVAR室内での確認で主審に助言を与え、それが判定に反映されることもある。
なお、ピッチ脇で「オン・フィールド・レビュー」のモニターを見ることができるのは主審のみで、そのエリアに選手が入ればイエローカード、監督やスタッフが入れば退席処分となる。