サイドバックの選手としては高い攻撃力
ラウンド16ではヨルダンに対して左サイドから積極的に攻め上がり、守備では屈強な肉体派の選手が揃うヨルダンの選手に味方が苦しむ中、ほとんど当たり負けせずに対応していた。サイドラインの推進力とクロスは1つの武器だが、サイドバックの選手としてはかなり高い攻撃センスを持っていることも注意するべき点だ。
ヨルダン戦の35分にこんなシーンがあった。ベトナムがポゼッションから全体を押し上げた状態で、右サイドバックのグエン・トロン・ホアンから大きなサイドチェンジが左サイド前方のドアンに出た。左足でボールを見事にコントロールしたドアンに対し、相手の右サイドバックが遅れてチェックにくる。
するとドアンはインサイドにボールを持ち出し、前線のファン・バン・ドゥクが左前に流れてくるが、ドアンはそこにパスを出すのではなく、右からファンが空けた中央のスペースにが入ってくるFWのグエン・クォン・フォンに出したのだ。
そしてインサイドから来たボランチの背中を取るように中央まで侵入してリターンパスを受けると、ダイレクトで左足の強烈なシュートを放った。
これは惜しくもGKに阻まれたが、すぐ飛び出してこぼれ球を押し込もうとしたところで相手ディフェンスに間一髪クリアされた。
こうしたシーンからもベトナム人としては恵まれたサイズと左足の技術を生かすだけでなく、非凡なビジョンを持った選手であり、仲間とのコンビネーションでもそうした能力を発揮できる選手であることが分かる。
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