流れるようなコンビネーションからのゴールがほしい
大会前はその火付け役を南野、堂安といったフレッシュな若手アタッカー陣が担うと見られていたが、ここまでの彼らは重圧やアジアカップ特有の難しさに苦悩している。彼らの精神的負担を軽減する意味でも、ロシアワールドカップなど数々の大舞台を経験し、修羅場をくぐってきた大迫に託されるものはやはり大きい。彼のゴールが生まれれば、森保ジャパンにどれだけの安心感と勇気をもたらせるか分からないのだ。
勝ち切りはしたものの、ボール支配率23.7%というショッキングな戦いをした直後の試合だけに、選手たちは自分たちが主導権を握って攻め倒すようなアグレッシブな戦いを強く渇望しているはず。ベトナム戦で本来の日本的スタイルを貫いて勝利を手にできれば、チームとしての戦い方の幅はより一層、広がるだろう。
「ユベントスにはなれなくても、いろいろカメレオンのように戦い方を変えたらいいんじゃないですか。相手チームや関係によってポゼッションするのか、それとも引いて守って戦うべきなのか、そういう判断をしていければ、チームとしてもっと成長していくんじゃないかと思います」
長友佑都(ガラタサライ)はサウジアラビア戦後に前向きに語ったが、ベトナム戦は変幻自在に戦えるチームになるための重要な一歩。大迫はその日本をけん引する最重要ピースと言ってもいい存在だ。絶対的1トップがしっかりとボールを収め、攻撃陣にリズムを与え、相手守備陣をかく乱することで、必ずゴール前に穴ができる。そこで仕留めるのが伊東なのか、乾なのかは分からないが、とにかく今回は流れるようなコンビネーションからのゴールが是が非でもほしい。
もちろん大迫自身がトルクメニスタン戦以来の得点を決めてくれれば御の字ではある。本人もここまでピッチに立てずにウズウズしているに違いない。その悔しさと不完全燃焼感を払拭すべく、泥臭くゴールを追い求める姿勢を押し出してもらいたいところ。今回のベトナム戦は「半端ない点取り屋」が新生ジャパンの真のエースに君臨するための重要な試金石になる。
(取材・文:元川悦子【UAE】)
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