「20歳という年齢であれだけ堂々と。並大抵のことではない」
この後、日本のボール保持率は多少回復したが、後半に入ってからサウジの猛攻撃が始まると再び防戦一方の状態に陥る。それでも弱冠20歳のスタメン最年少DFは冷静さと集中力を欠くことなく、危ない場面でも体を張り続け、決定機をことごとく潰す。相方の吉田らが抜かれたミスもカバーし、ゴール前の壁となって立ちはだかる。
老獪かつ研ぎ澄まされた守備は国際Aマッチ6試合目とは思えなかった。最終的にボール支配率23・7%、シュート3本という極めて厳しい内容を強いられた森保ジャパンが最後まで無失点で耐え抜けたのも、この若武者の存在があったから。彼のMVP級の働きには、チームメートからも賞賛の声が寄せられた。
「20歳という年齢であれだけ堂々と、しかもチームを助けるゴールを取るというのは並大抵のことではない。メンタルも含めて成長しているというのを感じる。嬉しいです」と長友佑都が言えば、吉田も「(2011年アジアカップで本格的に定位置をつかんだ)8年前の自分より全然いいと思いますよ」と底知れぬポテンシャルを実感した様子。
ベルギー・シントトロイデンへ赴いてわずか1年間で自身の市場価値を17倍に引き上げたという現地報道も決して大げさなものではないはず。それだけの潜在能力の高さを冨安はサウジというアジアの強敵に対して臆することなく示したのである。
日本サッカー界にとって長身DFの育成というのは急務の課題だった。プレミアリーグを主戦場とする吉田も「日本のセンターバックは選手層が薄い」とたびたび問題点を指摘していたほどだ。
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