日本代表はサウジアラビア代表に勝利したが、支配率はわずか23.7%だった【写真:田中伸弥】
【日本 1-0 サウジアラビア AFCアジアカップ2019・決勝トーナメント1回戦】
日本代表は21日、AFCアジアカップ2019決勝トーナメント1回戦でサウジアラビアと対戦し、1-0で勝利した。この結果により、森保ジャパンはベスト8へ駒を進めている。
20分に冨安健洋がCKから点を奪い、幸先よく先制に成功した日本。しかし、その後はサウジアラビアの勢いに押し込まれる時間が長く続き、苦しい戦いを強いられた。それでも守備陣が最後まで粘り強く対応し、ことごとく攻撃を跳ね返して無失点で試合を終わらせている。
試合後のスタッツを見ると、シュート数5本:15本、パス成功率59%:84%となっているなどほとんどの面においてサウジアラビアに上回られた日本。とくに支配率は23.7%:76.3%と圧倒されており、日本がアジアの舞台において支配率でこれほどの差をつけられるのは極めて異例と言える。
しかし、このデータは決して悲観するものではない。現代のサッカーにおいて、ポゼッション率は勝敗に直結しないからだ。
例えば昨年に行われたロシアワールドカップでは、ポゼッション率が平均して高かったドイツ代表やアルゼンチン代表といった強豪国が早期敗退を強いられている。また、2008年、2012年欧州選手権制覇、2010年南アフリカワールドカップ制覇と「ポゼッションサッカー」で一世を風靡したスペイン代表もベスト16での敗退を余儀なくされている。いずれの3ヶ国も、ロシアW杯では1勝しか挙げられなかったのだ。
さらには昨季のチャンピオンズリーグ決勝。ファイナルに残ったのはレアル・マドリーとリバプールであり、両者ともポゼッションではなくカウンター主体のチームだった。後者は現在も速攻をベースとしており、プレミアリーグでは堂々の首位に立っている。しかし前者はフレン・ロペテギ監督を招聘し、ポゼッション率を大幅に上昇させるもリーグ戦では不振に陥った。ロペテギ監督はわずか就任3ヶ月で解任されている。
このように、現代のサッカーはポゼッション型から堅守速攻型へとシフトチェンジしており、ポゼッション率=勝利という方程式は成り立たないのである。
日本代表はこれまでも、しっかりボールを繋いでいくというサッカーが基本となりつつあったが、その呪縛を解く必要があった。レベルで下回る相手に支配率が高くのはある意味で必然だが、強豪国相手にはボールを持たない戦いの方が効果的だったりする時もあるからだ。ロシアW杯でドイツ代表を破ったメキシコ代表、アルゼンチン代表相手にドローに持ち込んだアイスランド代表のように。
そういった意味で、サウジアラビア戦「支配率23.7%」で勝利を挙げたのは大きな収穫と言えるだろう。今後この白星を皮切りに、日本に新たなプランが芽生える可能性も捨てきれない。
【了】