「1つのミスが命取り」の戦いを勝ち抜くために
この4度の死闘に共通するのは「前半の早い時間帯での失点」だ。さらに言えば、ベスト8でまさかの敗退を強いられた1996年UAE大会の準々決勝・クウェート戦の1失点目も17分、2015年のオーストラリア大会も準々決勝・UAE戦のアリ・マブフートのゴールが開始7分に生まれるという有様だ。
この悪癖を克服することこそ、今回の森保一監督率いる日本代表の最重要課題。吉田も「次から本当のアジアカップが始まる」と語気を強めていたが、負の歴史を教訓に、チーム全体で緊張感と集中力を共有して試合に入っていく必要がある。
大一番2日前の19日昼、決戦の地・シャルジャで行われた練習では、右でん部負傷で別メニュー調整が続いていた大迫勇也がスパイクを履いてピッチに登場した。だが、全体練習には合流せず、サウジアラビア戦出場は厳しくなった。
となれば、前線は武藤嘉紀を軸とした構成になるだろう。武藤は17日のウズベキスタン戦で日本代表では3年3ヶ月ぶりのゴールを挙げ、ようやく迷いが吹っ切れた様子。とはいえ南野拓実や堂安律ら若手アタッカー陣との連係構築は不十分なままだ。前線のコンビネーションが噛み合わないことも想定されるだけに、ディフェンス陣はより強固な守備組織を築き上げる必要がある。
「一発勝負なので、1つのミスが命取りになる。グループリーグはミスを途中でカバーできる可能性があるけれど、次からはそれはない」と吉田は自分たちの心がけるべき点を再認識していた。
ウズベキスタン戦の失点シーンに象徴される通り、日本は最終ラインの背後に走られると脆さを露呈する。そこがサウジアラビアの強みでもある以上、これまでと同じ轍を踏んではいけない。センターバックコンビが吉田と冨安健洋なのか、槙野智章が割って入ってくるのかは未知数だが、とにかく最終ラインとGKは確実に無失点を目指していかなければならない。
「決勝トーナメント初戦の立ち上がりに集中が切れる」という日本の負の歴史にピリオドを打って勝ち進むために、1試合通してのポジティブなプレー内容、そして確実な勝利が必要だ。
(取材・文:元川悦子【UAE】)
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