今のチームには伸びしろがある
大迫問題にしても、武藤がようやく希望を示してくれた。ハビエル・アギーレ監督体制の2015年9月に初キャップを飾った彼は、早くから日本代表FW陣の軸になると見られたが、持てる能力を出し切れずに苦しみ、代表定着すら叶わなかった。
ロシアに行けたのもヴァイッド・ハリルホジッチ監督から西野朗監督へと指揮官が変わったから。だが、そのロシアの大舞台でもポーランド戦では空回りが続いて、本来の武藤とは程遠いパフォーマンスに終始した。
今回も追加招集での合流とあって最初はやはり難しかったが、オマーン戦1試合を経験してようやく自然体の武藤に戻れた。「ホントに長らくお待たせしましたという感じです」というのは心の奥底から出たコメントなのだろう。
ゴールという結果だけでなく、ボールを収めたり、周囲を動かす役割も献身的にこなしていて、大迫との差別化も図ることができそうだ。すでにイエローカードを1枚もらっているため、この先はリスクを抱えながらのプレーになりそうだが、右でん部負傷を抱える大迫の負担を軽減しつつ、日本の攻撃力を落とさないためにも、彼の力が必要なのは間違いない。
このように3試合で広げたバリエーションをどうこの先に活用していくか。そこは森保監督の手腕の見せどころだ。ウズベキスタン戦で本来の輝きを示せなかった乾を含め、このチームにはまだ伸びしろがある。
それを出し切るためにもサウジ戦の敗戦は許されない。1つでも多くの試合を消化し、ここまで不完全燃焼だった選手もブレイクするような方向に持っていけば、本当に5度目の頂点が見えてくる。まずはラウンド16突破から確実にやりきってほしいものだ。
(取材・文:元川悦子【UAE】)
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