データで比較する大迫と武藤
オマーン戦ではシュートに持ち込める場面でパスを選んでしまうなど本来の持ち味を出せなかった。だからこそ「2点目を取って試合を終わらせるべく入ってきたので、絶対に次のウズベキスタン戦の勝利に貢献するためにも、自分が点を取るであったり、僕らで勝利に導ければいい」。そして第3戦に向けて「そう簡単に勝てる相手ではないですし、きれいなプレーは本当に必要ないと思うので、チームのために走り続けたい」と決意も述べていた。
そして迎えた大会初先発の機会で有言実行のプレーを見せたわけである。ここまで右でん部の痛みを抱える大迫勇也のバックアップに不安を抱えていた森保ジャパンに、新たな光明が見えた試合にもなった。これまで“サブ”でしかなかったストライカーの活躍がチーム全体の競争を刺激していくかもしれない。
武藤の貢献度の高さが大迫に匹敵するのは、スタッツ上でも示されている。ウズベキスタン戦で85分に交代するまで、武藤は28本のパスのうち22本を成功させ(成功率78.6%)、相手陣内では17本のパスを通した(成功率77.3%)。デュエルは13回を記録し、勝率61.5%。ボールは10回失ったが、3回のリカバリーで奪い返した。
一方、トルクメニスタン戦での大迫は24本のパスのうち17本成功(成功率70.8%)、相手陣内では14本(66.7%)を通した。デュエルは13回を記録し、勝率53.8%。ボールロストは同じく10回で、リカバリーは1回だった。
シュートに関するデータでは武藤が85分間で2本放って、枠内に1本飛ばし、1得点を奪ったのに対し大迫は90分間で6本放って、うち2本を枠内に飛ばして2得点につなげている。似たような数値に見えがちだが、これらのデータを見る上で考慮しなければならないのは対戦相手との噛み合わせだ。
大迫が出場したトルクメニスタン戦はボール支配率で日本が70%と相手を圧倒的に上回った試合で、総パス数673本、パス成功率88%、シュート21本が生まれた。他方で武藤が初先発を飾ったウズベキスタン戦はボール支配率で相手に上回られて43%。パス成功率は83%と大差なかったものの、当然ながら総パス数は426本にとどまった。シュート数も14本と初戦に比べて少なくなっている。2人のストライカーが同じような数字を残していても、前提となる試合全体の構図が全く違っているのである。