改革は成功。チームが発揮した究極の一体感
飯田の活躍もあってPK戦を制し、勝ち進んだ流通経済大学柏(千葉)との決勝戦。先制を許す苦しい展開から同点と逆転の2ゴールを叩き込み、流れを青森山田へ引き寄せたのは檀崎だった。
「飯田はもともとキャプテンシーがあり、責任感も強く、チームに対してかなり厳しい言葉をかけられる性格の持ち主なので。言葉は悪くなりますけど、ここでチームを一度ぶち壊して、再構築させることで選手一人ひとりの負けん気やモチベーションを大きく引き出したいと考え、大会直前ではありましたけど、イチかバチかの改革を施しました」
キャプテンを交代させた意図を、黒田監督はこう明かす。昨夏のインターハイでは2回戦で昌平(埼玉)に大逆転負けを喫し、選手権出場をかけた青森県大会決勝でも大苦戦を強いられた。そして、プレミアリーグイーストでの敗戦。1995年から指揮を執る名将は、もう待ったなしと腹を括った。
「いまのままでは全国優勝は絶対にできないと踏んで、ちょっと荒治療ではありましたけど、チームに化学反応を起こさせました。ベクトルがいい方向へ向けば、結束力とパワーをもって戦える子どもたちが多いので。いま振り返ってみると、すごくいい改革だったと思っています」
表彰式を終えた後の場内一周。バックスタンドに差しかかったところで、飯田は忍ばせていた赤いキャプテンマークを檀崎の左腕に、「ありがとう」という言葉を添えて巻いた。プレミアリーグまで檀崎が巻いていたものだった。自らは黄色いそれを巻いてプレーした飯田が、端正なマスクを思わず綻ばせる。
「これまでチームを支えてきたのは、まぎれもなく檀崎ですから」
飯田の一挙手一投足を介して伝わってくるのは、究極と表現してもいい一体感。黒田監督が求めた化学反応を、仲間を思いやる優しき心とPK戦で見せた勝負強さを介して具現化させた守護神は、卒業後は大学でサッカーを続け、いつかは檀崎と同じ舞台で競い合う青写真を描いている。
(取材・文:藤江直人)
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