まさかのキャプテン交代。その意図とは?
初優勝した2年前は、埼玉スタジアムの応援席で声をからせた。迎えた最終学年。飯田は副キャプテンとして、1年生のときからAチームに抜擢され、キャプテンに選出されたMF檀崎竜孔(りく)を支えた。想像すらしなかったキャプテン交代は、昨年12月上旬に黒田監督から命じられた。
プレミアリーグイーストで清水エスパルスユースに初黒星を喫し、1試合を残して優勝が絶望になった状況を受けてのミーティングで、新キャプテンを拝命した。
「自分は檀崎みたいにプレーで引っ張っていける選手ではない。だから、みんなの力を貸してほしい」
ミーティングで所信を訴え、仲間たちが部屋から出て行くなかで、あえて檀崎を呼び止めた。広いミーティングルームで行われた2人だけの話し合い。郷家友太(ヴィッセル神戸)から「10番」を引き継ぎ、卒業後は北海道コンサドーレ札幌入りするエースへ、飯田は思いの丈を打ち明けた。
「お前が背負っていた重圧は、オレが半分預かる。だから、お前はプレーに集中してくれ」
次の瞬間、檀崎は大粒の涙を流しながら「ありがとう」と言葉を返してきた。苦楽をともにしてきた盟友が流した涙の意味を、飯田はこう慮る。
「キャプテン交代に関しては檀崎本人も驚いていたし、思うこともたくさんあったはずですけど、青森山田のキャプテンと『10番』を背負い、なおかつエースストライカーも務めるのは、相当な重圧との戦いでもあったと思う。それを少しでも軽くできればと思い、自分がキャプテンの分だけ預かると言いました。悔し涙であり、重圧が軽くなって(ホッとした)涙でもあると思っています」
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