ゴール後に「サイコー!」
チャナティップはタイ代表の中で最も技術に優れ、インテリジェンスも備えた選手だが、チーム内で最もよく走る選手でもある。そして決定的な場面には、必ず彼がどこかで関与している。UAE戦も一瞬の閃きとテクニックで決勝トーナメント進出を手繰り寄せる同点ゴールを演出した。
1点リードされて迎えた41分、中盤で相手のクリアボールを拾ったティティパン・プアンチャンから鋭いパスを受けたチャナティップは、左足でコントロールし、すぐに右足で浮き球のパスを選択。それに反応した元サンフレッチェ広島のFWティーラシンが、相手ディフェンスラインの背後に飛び出してボールを収める。そして、最後は起点となったティティパンが自らペナルティエリアに飛び込んで執念のシュートを押し込んだ。
「今日は決勝トーナメントに進むことができました。チームに貢献できて本当に嬉しいです。母国のために戦ったチームメイトや監督にも感謝したいです」
そう語るチャナティップは、とにかくチームプレーが光る。攻撃では彼のところにボールが集まり、少ないタッチで素早く前を向いて効果的なパスを前線に供給するだけでなく、自らドリブルで複数のディフェンスを引きずるように前進していくこともできる。もはやアジアのレベルで彼を単独で止められる選手はほぼおらず、ビッグチャンスはほとんどチャナティップのプレーから生まれると言っても過言ではない。
守備では90分間にわたって惜しみないハードワークを披露し、相手選手に猛然とプレッシャーをかけ続ける。チームで一番上手い選手が一番走っているのだから、周りも触発されないわけがない。ピッチ外で見せるお茶目な一面からは想像できないほど、ピッチ上でのチャナティップはまさに戦士だ。
今大会初勝利もチャナティップの献身によってもたらされた。58分、カウンターで右サイドを駆け上がったトリスタン・ドーのクロスに、見事なボレーシュートで合わせて、それが決勝点に。Jリーグで飛躍的に向上した得点力を遺憾なく発揮し、タイ代表を危機から救った。ゴール後には両手を挙げるお馴染みのポーズと「サイコー!」の雄叫びが自然に出ていた。
札幌での2年目は2018シーズンのJリーグベストイレブンに選ばれる大活躍。チャナティップは「ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督や札幌のチーム、スタッフたちに感謝したいです。僕はそこですごく成長できました。だからこそ、今こうしてタイ代表を助けて、次のラウンドに進むことができるんです」とJリーグでの成長が代表での結果にもつながっていることに感謝を述べていた。