常に招集される保証などない
それだけ高度な適応力と察知力を備えていないと活動期間の少ない代表ではやっていけない。北川は「これをやり続けるしか道はない」と自らに言い聞かせていたが、次も呼ばれる保証はないのだ。それは武藤にしても同じ。最低でも今大会のうちに攻撃をスムーズに動かす術を体得しなければ、先は厳しいだろう。
「大迫は僕らの大黒柱で、将棋で言うと飛車角レベルの選手。その飛車角でなく、他の駒で勝ちに行くことも必要。ずっと大迫が出ているとは限らないし、だからこそ『自分は代わり出てるんじゃないんだ』と思わないと。『俺がチームを変えてやるんだ』くらいの気持ちがほしいですよね」と長友は語気を強めたが、全くその通りだろう。大迫不在で攻撃力が一気に低下する状態では、本当に決勝トーナメントは戦えない。
大迫はオマーン戦のハーフタイムに代表スタッフとボールを蹴る様子を見せていて、このままいけばラウンド16では復帰できそうな雲行きだ。が、ケガを抱えている以上、ムリはさせられない。オマーン戦のように違うオプションで挑まなければならない状況はやってくる。そこで同じような停滞感を漂わせてしまったら、8年ぶり5度目のアジア制覇の夢は幻と消えるだろう。
17日のグループ最終戦・ウズベキスタン戦(アルアイン)で引き分け以下だと2位通過が決まり、ラウンド16はオーストラリアとの直接対決になる。最悪のシナリオを想定しつつ、北川と武藤にはどうすれば存在価値を高められるか模索してほしい。そして他のアタッカー陣やMF、サイドバックらも含め、彼らを含めた最良のバランスを築くべく、話し合いを重ね、ディテールを突き詰める努力を続けてほしい。
(取材・文:元川悦子【UAE】)
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