ロシアW杯時とは違うスタンス
となれば、乾はジョーカーとして、ここ一番の時間帯に出すのが、現状のベストな選択だ。原口と交代して左サイドに入るだけでなく、堂安と代わって原口が右に移動したり、南野と代わって原口か堂安が真ん中に行く形も取れるだけに、彼1人がいるだけで戦術的は幅は一気に広がる。
本人も「自分が出たらとにかく幅を取ることをやらなきゃいけないと思う。まず相手を広げて、そこから空いてくるところができるから、初戦の反省を生かしてやっていければいい」と自らのやるべきことを明確にイメージしている様子だ。
仮に堂安と左右のサイドに陣取った場合は、ロシアワールドカップの時に左中心の打開を意識するのではなく、若い堂安の仕掛けと突破力という特長を最大限生かしながら、サポートする意識も持っているという。
「律が結構、仕掛けたりするタイプなので、あっちが仕掛けるなら俺はそこまでやらなくてもいいかなと。もちろん仕掛けるタイミングもありますけど、バランスを取りながらやっていかないといけないという感じはします」と乾は神妙な面持ちで言う。
こうした口ぶりを見ても分かる通り、今の彼はベテランとして若手がやりやすい環境を構築しようと務めている。そのスタンスはやはりロシアの時とは大きな違いだ。そうやって周りをコントロールしながら、敵と駆け引きしていく乾のプレーは、間違いなく攻撃陣の起爆剤になる。停滞感が否めなかった初戦とはガラリと流れを変えてくれるはずだ。
トルクメニスタン戦はスタメン組のコンディションを上げるために、森保監督はあえて1人しかメンバーを代えなかったが、次戦はより多くの戦力を加えながら戦うと見られる。
そこで真っ先に起用すべきなのは、やはりこの男に他ならない。新10番をどう使いこなすのか。そこに指揮官と日本代表の成否がかかってくるといっても過言ではないだけに、オマーン戦以降の動向を注視していきたい。
(取材・文:元川悦子【UAE】)
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