母国に史上初の勝利をもたらせるか
ただ、普段ヨーロッパでプレーしていることもあって、現実的な目線も失っていない。「もちろんピッチに向かう誰もが勝ちたいと思っているけれど、小国でプレーしている僕らはこれほど大きなゲームでプレーした経験がなく、そのことも理解している」とミンガゾフは引き締まった表情で語った。
15年ぶりのグループリーグでは、初戦で日本と対戦し、第2戦はウズベキスタンとの因縁の対決、そしてオマーンとの第3戦と、いずれも格上に挑む形になる。決勝トーナメント進出は困難なミッションだ。
それでも諦めてはいない。毎試合、全力を尽くした先に15年前よりも上のステージが見えてくると信じている。
「僕たちはアジアカップまでたどり着けてとても嬉しく思っている。これはこのチームに取っても、トルクメニスタンサッカー界にとっても非常に大きな成果だ。僕たちはできる限りのところまで突き進んでいきたいけれど、目標は毎試合が終わった後に『できる限りのことを全てやった』と言うこと。なぜなら僕たちはここへ来ることを長い間待っていたのだから」
まずはグループリーグの初戦で、日本とのビッグゲームを制す。これが彼らにとって現時点での最大の目標になるだろう。ミンガゾフは「もちろん日本はアジアの中でも最強のチーム。日本はボールを握って試合をコントロールし、早くゴールを欲するだろう。僕たちはそこからボールを奪って、カウンターアタックで素早く前線まで持っていきたいし、守備陣の質の高さを見せていきたい」と意気込んでいる。
6歳から始めたサッカーは、父から学んだ。その背中を追いかけ、輝く姿を見て、それから15年経って偉大な父と同じ舞台に立つチャンスが巡ってきた。親子で国を代表してアジアカップに出場した例は、日本でも聞いたことがない。しかも歴史上たった2回しか参戦したことがないにもかかわらず、父と息子がそれぞれに出場するという奇跡的な巡り合わせ。だからこそ、ミンガゾフは父カミルを超え、トルクメニスタンサッカー界の歴史を変えるべく持てる全ての力をピッチに注ぐ。
(取材・文:舩木渉【UAE】)
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