重圧を乗り越えた先に…
確かに11月までの親善試合では、中島ら2列目の“NMD”がいるかいないかで攻撃のクオリティに大きな差が出ていた。それでも「NMDがいなくて大丈夫?」などとはもう言っていられない。彼らが1人欠けようが、1人もいなくなろうが、アジアカップは優勝が目標であるだけでなく、優勝しなければならない大会なのである。吉田が言うような「期待」に応える結果を残せなければ、若い選手たちの将来のステップアップがなくなってもおかしくはない。
堂安は以前「プレッシャーをかけられるのは嫌いではないですし、プレッシャーがかかればかかるほど自分の力を発揮できると思っているので、本当に楽しんでいますね、プレッシャーを」と言って不敵な笑みを浮かべていた。試合前にはあえて緊張するようにメンタルをコントロールしてピッチに向かうほどの男。それならばアジアの舞台で真の力を見せてもらうしかない。
これまで右利きの中島が左サイドで担っていた攻撃のスイッチ役を、左利きの堂安が右サイドでこなす。今でこそボールを持っていない状態での動き出しや駆け引きに磨きがかかったが、元はボールを持ってナンボの突貫ドリブラーだったのだから、同じようにできないはずはない。
もちろん左サイドに入ると予想される原口元気や乾貴士がボールを持った際に、ゴール前へ突っ込んでいくこれまで通りの形も忘れてはならない。さらに中島が蹴ることの多かったセットプレーでも、堂安の左足から強烈なキックが放たれれば10番の不在を補うことができるだろう。
中島の不在を他の選手で補い、新しい形を見つけることができればチーム力の底上げにもつながる。アジアカップは決勝まで勝ち進めば最大7試合を戦うことができ、その間の合宿で組織を熟成していくことも可能。負傷離脱した選手たちに代わる人材が台頭すれば、競争もより激しくなって森保ジャパンは活性化していく。その先頭に立つべき存在が堂安だ。
彼は言う。「やっぱりタイトルを獲ることによって自分の価値もぐっと高まると思いますし、親善試合だけじゃ判断しづらいものもあると思うので、国民のみんなのそれを確信に変えられるプレーを、結果を出していきたい」と。
ならばあえてプレッシャー…いや「期待」をかけたい。堂安が自らのプレーでチームを引っ張り、アジアカップで優勝できなければ、今の日本代表に未来はない。その「期待」を軽々と越えて見せてこそ、堂安律なのではないか?
(取材・文:舩木渉【UAE】)
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