日本代表の強みと弱み
(図9)中盤とディフェンスラインの間で相手選手にスペースを与えてフリーにしてしまった場面の例【画像:YouCoach】
森保監督はボールの位置を基準に、統制のとれた横一列の守備ラインをフィールドに3本並べることで守る「ゾーンディフェンス」を採用した(図9)。
日本代表の守備でよく行われるのは、前もってボールが入りそうな相手選手を予測して距離を詰める守備ではなく、各々が自分の持ち場で待っている状態から、ボールが入った直後にその相手選手(図9の中で赤く囲った選手)へのプレスを開始する形だ。
このボール重視で行う守備形成の方法では、相手選手をマークして守備形成に重きをおく場合よりも、統制のとれた守備組織を形成することが可能になる。だがその一方で、相手チームが3本の守備ラインの間にいる選手へパスを通すことに成功した際にはピンチになりかねない。
この日本代表のディフェンスラインを分析した結果、統率の取れたディフェンスラインを形成するための戦術理解や、選手同士の意思疎通が十分に行き渡っていると感じる。しかし、その一方で相手チームのパスの受け手にプレスをかけにいくことより、デイフェンスラインを後ろに下げることを好んでいるため、守備面でのアグレッシブさはあまり感じられない。
今の日本代表は各々の高い集中力、規律を持ってプレーすることによりストロングポイントを最大限に発揮し、コレクティブな組織でウィークポイントを消していることが見受けられる。
【日本代表のストロングポイント】
・秩序、集中力、規律、同じ戦術イメージをすべての選手が共有している。
・予想しにくいプレーとスピードと技術の高さによって生み出される、スピーディーかつ豊富な攻撃のバリエーション。
・若手とベテランがうまく共生している。
【日本代表のウィークポイント】
・全体的に身体が小さいため、特にセットプレー時に不利になってしまう可能性がある。
・守備面でのアグレッシブさに欠けていることが、特に試合終盤などで相手チームにプレーするスペースを与えてしまい、チームに敗北をもたらしかねない。
・ゴールリーダーの不在。ペナルティエリア内のチャンスをシュートで終わらせられるストライカーがいない。
(分析・文:アルベルト・ナビウッツィ【YouCoach/イタリア】)
▽著者プロフィール
アルベルト・ナビウッツィ
1979年10月20日生まれ、イタリア国籍。UEFA公認B級指導者ライセンス所持(2005〜)。かつてフィオレンティーナなどを率い、高度なサッカー戦術のエキスパートとして名高いセルジオ・ブーソ氏の下で修行を積む。アマチュアからプロクラブまで様々なカテゴリーの育成年代の選手たちを指導した経験も持つ。ジョバンニ・ストロッパ氏(現クロトーネ監督)などの下でも働き、現在はロベルト・ドナドーニ氏のスタッフとして試合分析官として活動中。 指導者サポートサービス「YouCoach」の創設者の1人。
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