冨安には「吉田の後継者」としての大きな期待が寄せられる
2011年大会の吉田は、初戦・シリア戦で劇的な後半ロスタイム弾を挙げてスタートしたものの、準々決勝・カタール戦で退場し、重要な準決勝・韓国戦を累積警告で欠場するという浮き沈みの大きな経験をした。それでもアルベルト・ザッケローニ監督(現UAE)から信頼され、日本代表実績がほぼなかったにもかかわらず、大会通して最終ラインの軸に据えられ、日本守備陣のリーダーへと成長していく土台を築くことに成功した。
20歳の冨安が同じような軌跡を描いてくれれば、吉田や槙野智章(浦和)ら30代DFからスムーズな世代交代も可能になる。190cm近い高さがあり、フィード力があり、冷静な判断力も備えているDFは日本の若手にはそうそういない。だからこそ、冨安には「吉田の後継者」としての大きな期待が寄せられるのだ。
「『失敗がDFを育てる』と麻也選手がいっていた? 確かにDFはそうだと思います。僕の短いサッカー人生の中でも失点につながるミスは沢山してきましたし、そのたびにきつい思いもした。それを乗り越えていく時間が自分を強くしてくれる。公式戦なので結果を求めながらやりたい」と冨安は神妙な面持ちでコメントしていた。
彼も堂安と同じようにこの2年前で欧州へ赴き、屈強なフィジカルを誇る外国人選手と対峙し続けてきた。その経験値と持ち前の落ち着きを最大限出せれば、8年前の吉田より安定感のあるパフォーマンスができるはず。森保監督が吉田のパートナーに誰を据えるかはまだ分からないが、11月のベネズエラ戦(大分)の出来を考えれば、冨安を選ぶ可能性は十分ある。そのチャンスを得るためにも、9日の初戦・トルクメニスタン戦までの調整期間にいいアピールを見せることが肝要だ。
堂安との東京五輪コンビが欧州での勢いをそのまま今大会に持ち込み、力強い突き上げを見せれば、日本代表はさらなる活性化が図られる。彼らがアジア王者奪回のけん引役になってくれることを強く求めたい。
(取材・文:元川悦子)
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