厳罰に処される反体制派の活動家たち
2016年初め、習近平は北京の国営メディアを訪問。いくつかの部署を愛国心に欠けていると叱責し、国家に絶対的な忠誠心を示せと命じている。
曰く、「メディアが手掛けるすべての報道は、党の意思を反映し、党の権威と団結を擁護するものでなければならない」
習近平は「毛沢東以来、最も権威主義的なリーダー」と形容されることもある。
彼は腐敗した官僚や役人を一掃するキャンペーンを展開してきたが、これは政治的なライバルを追放するための口実にすぎないと批判する者さえいる。また習近平の下では、一般市民に対する締め付けも厳しくなってきているという。
シモンズは証言する。
「政府側は、明らかにメディアの統制を強化しようとしている。しかも市民生活のあらゆる面で、中央政府による統制が再び強まっている」
一例を挙げよう。2016年3月、政府の公式サイトには習近平の辞任を求めるメッセージが短時間、掲載されたことがあった。
反体制派の活動家が、これほどあからさまに異議申し立てをするというのは、かつての中国では見られなかった現象である。習近平はすぐさま対応して厳罰に処している。
アメリカやドイツに住む反体制派の活動家は、前代未聞のメッセージが寄せられた意義についてコメントしたが、これらの人物にはさらに厳しい処罰が待っていた。
彼らを逮捕できないことがわかると、当局は国内に残っている家族にターゲットを絞る。そして子息が罪を犯したという理由で、年老いた両親を逮捕することまで行ったのである。
(文:ジェームズ・モンタギュー/訳=田邊雅之)
▽ジェームズ・モンタギュー
英国エセックス州出身のジャーナリスト。スポーツ、政治、そして文化を専門分野とし、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、オブザーバー、GQ、エスクワイヤ、CNN、BBCなどの各媒体で、精力的に執筆・解説活動を展開。2008年には、中東諸国のサッカーと社会を描いた処女作「When Friday Comes:Football, War and Revolution in the Middle East」を出版。2014年には、ワールドカップ・ブラジル大会出場を目指す、世界6大陸の様々な代表チーム、しかも弱小チームの奮闘ぶりを描いた「Thirty One Nil:On the Road With Football’s Outsiders, a World Cup Odyssey」を出版。2015年のイギリス最優秀スポーツ書籍賞に輝いている
▽田邊 雅之
1965年、新潟県生まれ。ライター、翻訳家、編集者。『Number』をはじめとして、学生時代から様々な雑誌や書籍の分野でフリーランスとして活動を始める。2000年からNumber編集部に所属。ワールドカップ南ア大会を最後に再びフリーランスとして独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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