トップクラスの選手を高額で次々獲得
だが、中国サッカーは再び息を吹き返す。しかも今回は、国家主席自らが直々に再建に乗り出す格好になった。
習近平は五つの部会に、現状分析とラディカルな改革の断行を指示。これを受けて起きたのは、中国企業や富裕層が、狂ったようにサッカーに投資をし始めるという現象だった。丸いボールに政府のお墨付きが与えられたことによって、一気にピッチ上に金が流れ込み始めたのである。
『バンブー・ゴールポスト』の著者、シモンズは語る。
「計画案が発表されるやいなや、すべての人が目を通したし、どうやって貢献できるかを検討した」
それは中国の資本家たちがサッカーファンだったからではない。彼らを動かしたのは、共産党のエリートたちの歓心を買い、政府のプランに相乗りしたいという思惑だった。
まず彼らの思惑は、新たな国内リーグ「スーパーリーグ」の設立という形で結実する。
超富裕層がクラブを所有し、膨大な金を積んで有名選手をかき集めるようになった結果、スーパーリーグは瞬く間に世界的なブランドに成長した。
しかもスーパーリーグによる有名選手の補強には、大きな特徴があった。
これまでのサッカー界では、選手生活の晩年を迎えたスターたちが、最後の一稼ぎをするために「東」に向かうケースが大半を占めていた。だがスーパーリーグで起きている現象は、このようなステレオタイプから程遠い。
たとえばアジア・チャンピオンズリーグの優勝チーム、広州恒大が3200万ドルでアトレティコ・マドリーから獲得したのは、コロンビア代表のジャクソン・マルティネスである。
江蘇蘇寧はブラジル人のアレックス・テイシェイラとラミレスを、それぞれ3800万ドルと2500万ドルで呼び寄せている。特にテイシェイラの移籍金は、アジアにおける新記録となった。