習近平はサッカーに夢中になった理由
習近平の部屋には、およそ中国の政治家が飾るにはふさわしくない、珍しい写真もあった。
3枚目は2012年、習近平がまだ副主席だった頃に、ダブリンのクローク・パーク、ゲーリック・フットボールの本場で撮影されたものである。
通常、中国の政治家が海外を訪れた際には、ポーカーフェイスで笑顔を作り、写真に収まるのが常だが、この写真はまるで違っている。習近平は正面を向き、丸いボールを集中した表情で蹴っている。後方では、その様子をアイルランドの政府要人たちが眺めているのがわかる。
この1枚は、習近平のバイタリティや若々しさだけを示唆しているわけではない。むしろ彼の人生において極めて重要な役割を果たしてきた、別の要素も示唆している。習近平は熱狂的なスポーツ好きであり、特にサッカーには目がないのである。
習近平が大のサッカーファンだということは、昔からよく知られていた。
現に彼は副主席時代、二者会談などを行う際に、マニアックなサッカー談議に耽けることもあった。
2011年にソウルを訪れた際には、韓国の野党である民主党のリーダー、孫鶴圭(ソン・ハクギュ)と会談。元マンチェスター・ユナイテッドのミッドフィルダー、朴智星のサインが入ったユニフォームをプレゼントされた後、サッカーの話に花を咲かせている。
会談の席上、「中国サッカーに関して、三つの望みを叶えるとしたら?」と尋ねられた際には、こんなことまで口にしている。
「ワールドカップの本大会に、代表をもう一度出場させること。ワールドカップを母国で開催すること、そしてワールドカップで優勝を収めること」
習近平は、なぜそれほどサッカーに夢中になったのか?
公式的には、父親からサッカーへの愛情を受け継いだことになっている。彼の父親は、中国国内で行われるサッカーだけでなく、海外サッカーも観戦するような人物だった。
だが事実は異なる。