「僕が良ければこのチームは勝てる」
――特にドイツでは守備でもハードワークが求められて、フィジカル面で要求される基準は非常に高いものがあると思います。
「僕が今までプレーしてきたのはずっと上位にいるようなチームではなく、自ずと守備が優先されるチームでした。ただ、日本とヨーロッパでFWの守備に求められる動きは違うし、ドイツとベルギーでも違うと思います。
ドイツではゲーゲンプレッシングだったのでスプリントでボールを追いかけて1対1の勝負という感じでしたが、シント=トロイデンVVでは前からプレスをかけることもありながら、よりチームとしてまとまって動くことが要求されます。最近は監督から『チームとしてコンパクトな状態を保て』と、すごく言われます。やはりFWの守備はなかなかボールを奪えるものではないですが、次のパスコースをふさいだり、なかなか難しいですね」
――攻撃面では最近の試合は2トップに入っていて、鳥栖時代のトップ下よりもゴールに近い位置でプレーすることが多いですよね。そして、ゴール前の動きがかつてよりもストライカーらしくなった印象です。
「そうですね。僕が移籍してくるまで、このチームには点を取れる選手がいなくて、なかなか勝てていませんでした。僕はペナルティエリア付近でボールを触りたいですが、FWの選手ではありません。ロングボールを胸で収めるようなプレーはできないので、裏への抜け出しやボールのないところでの動き出しで勝負するしかないと考えたんです。
今はDFとうまく駆け引きできていますけど、最近は相手も対策をして自分のところをうまく消してくるようになったので、少し難しくなってきました。それでもペナルティエリア付近でボールを足もとに受けられれば自分から勝負できますし、逆にそういうプレーを増やして、これからは他の選手のチャンスを作ったりできればいいなと思っています」
――やはりゴールを決めるごとに、試合の中で得られるチャンスの数は減ってきている。
「そうだとしても1試合に1本は必ずチャンスを作れるので、それを入れられるか、入れられないかだと思います。僕が良ければこのチームは勝てると思いますし、良い時も悪い時もあって、その悪い時にどれだけペースを落とさないかが重要だと思っているので、今は耐えどきですね」
――自分が決めてチームを勝たせるという、エースの自覚みたいなものも芽生えて生きていますか?
「エースという感覚は全くないですけど、ゴールに近い位置でプレーできているからこそ、ボールにも触れているし、チャンスがあればゴールも決められる自信がある。毎試合多くのチャンスがあっての10得点ではなくて、少ないチャンスでしっかり決められているからこその10得点だと思っています」
(取材・文:舩木渉【ベルギー】、取材日:2018年12月19日)
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