苦しみながらも勝てるユベントス
そしてサポナーラの幻のゴールは、そもそもユーベの最終ラインがパス回しに失敗し、相手にボールを与えたところから献上したもの。それを考えれば余計に、彼らが判定に助けられた印象は強くなるというものだ。
しかし、それでも勝ったのはユベントス。サンプに押される中で大崩れせず、勝負どころではきっちりとゴールを決めてきたのもまた彼らだ。この日はマンジュキッチだけでなく、ディバラも良く前線から後方への守備へと戻っていた。またC・ロナウドは、積極的にフォアプレスに行って相手のDFを追いかけ回していた。これまでの結果を呼び寄せてきた実直なプレー自体は、この日も健在だった。
勝負に徹し、戦術的なチームプレーを重んじるのはこのクラブの伝統である。そして今シーズンは人一倍勝負にこだわるアタッカーが加入し、勝ち点3の奪取に対する執着心はより強くなった。選手個々の実力、監督の緻密な戦術、盤石の経営規模と強さの秘訣は多々あるが、その根幹をなすものはやはり勝負へのこだわりだろう。
10月、トゥットスポルトのインタビューでフェデリコ・ベルナルデスキが語った台詞が印象的だった。「CLバレンシア戦で退場を喰らってクリスティアーノが泣いたけど、あれは僕らにも衝撃だったんだ。あれだけたくさん勝利を味わってきた選手が、まだあんなに勝負にこだわるのかと」。それが良い形で、チームに伝播しているのだろう。
C・ロナウドは違和感なく溶け込み、集団としての勝負強さは増した。圧勝などはむしろ少ない。拮抗した死闘を制する逞しさを、1試合限定ではなく19回も続けてきたということが、この前半戦の勝ち点53という数字の本質的な意味だ。
(文:神尾光臣【イタリア】)
【了】