柴崎の振る舞い
今回の森保ジャパンには、2010年南アフリカ大会から3度のワールドカップを経験した長友佑都(ガラタサライ)、2014年ブラジル大会から2度のワールドカップに参戦した吉田麻也(サウサンプトン)、大迫勇也(ブレーメン)といった年長者が何人かいるが、柴崎は決して若手ではない。彼ら年長者と2016年リオデジャネイロ五輪世代以下の若手をつなぐ役割も求められてくる。
そのこともよく理解しているから、この日の柴崎はメディアに対して10分以上も自身の考えを熱心に語ったのではないだろうか。リーダーたる人間というのは、時にそういう立ち振る舞いが必要になるものだ。
それは日頃、多くを語らない小笠原もそうだった。2007年夏にイタリア・メッシーナから鹿島に復帰し、背番号40をつけて奇跡の逆転J1優勝へ導いた時、あるいは2011年3月11日の東日本大震災発生時における彼の発信力は凄まじいものがあった。
その姿を目の当たりにした柴崎も考えさせられるところがあったに違いない。最近の柴崎も表に出る場面ではキッチリと仕事を果たし、自分の意見を明確に口にする。中堅世代のリーダーとしての風格を漂わせることも多くなった。
それも日本代表でのプレー経験を重ねて確固たる自信を手にしたからだろう。ロシアで一定の成果を収めたことが本人にとっては非常に大きなプラス材料になっているはずだ。
今季前半戦のリーガエスパニョーラでは思うように出場機会に恵まれず、苦しい時期を過ごすことになったが、1ヶ月半ぶりの公式戦先発となった15日のレアル・ソシエダのパフォーマンスは決して悪くなかった。その感覚を前向きに捉えて、アジアカップに向けて自らを研ぎ澄ませて行けば、彼は日本をアジア制覇へと導けるはず。そういう大きな仕事をして、現役を退く小笠原に朗報を届けてほしいものだ。
(取材・文:元川悦子)
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