不安定な一年。それでも収穫はあった
今季、クラブ史上初の天皇杯決勝にたどり着いたベガルタ仙台。ファイナルで浦和レッズに敗れたため、惜しくもタイトル獲得とはならなかったが、試合後に渡邉晋監督は「伸びている」とチームの成長を口にしていた。
ただ、リーグ戦に目を向けてみると、安定感を失った同チームは11位でシーズンを終えるなど、決して楽観視できない結果で年内を締めくくってしまった。
得失点-10はリーグワースト3位の数字。残留争いに最後まで巻き込まれることはなかったが、それ以上に多くの課題が浮き彫りとなってしまった。
冒頭でも記したが、今季の仙台において最も欠如していたのが安定感だ。2018シーズン開幕5試合は無敗で乗り切ったが、第6節で初黒星を喫すると、以降は勝ち負けを繰り返し、継続して勝ち点を奪うことができなかった。今季、連勝を果たしたのは3回だけ。しかし連敗はシーズンで5回も喫しているなど、不安定さが際立ってしまう形になった。
ポゼッションサッカーを基本とする仙台。両ウィングバックをうまく使いながら攻撃に人数をかけ、サイドから崩しにかかる。最前線の石原直樹にボールが収まればそこからまた相手のスペースを見つけ、2列目の選手が追い越し、ゴールを奪いきる。攻撃陣の働きは決して悪くなかった。事実、リーグ戦全34試合で仙台が無得点に終わったのはわずか7回だけだ。
それでも得失点-10という数字。守備陣の粘りが足りなかったと言わざるを得ない。もちろん、取り切るべきところでゴールネット揺らせなかった攻撃陣にも多少の責任はあるが、失点数54は明らかに多い。横浜F・マリノスには2戦合計13得点を挙げられているなど、苦手とする相手にはとことんやられてしまうというのも、仙台の弱点ではあった。
それでも収穫はあった。渡邉監督の「伸びている」という言葉通り、仙台は天皇杯決勝まで辿り着くなど、成長を感じた一年でもあった。
シュミット・ダニエルは日本代表に、板倉滉と椎橋慧也は年代別代表で活躍、西村拓真もJリーグで奮闘し、海外へ活躍の場を移した。選手個々をみても、仙台で成長を遂げるプレーヤーは多くなってきている。
ただ、サポーターは「成長している」だけで満足するはずがないだろう。過去3シーズンすべて二桁順位に終わってしまっている仙台に求めるのはやはりタイトルだ。道のりは決して簡単ではないが、サポーターを納得させる材料はこれしかない。今季、成長を感じたならば来季はそれを結果に繋げるべきだ。
J1に定着したと言っても過言ではない仙台。2019シーズンはさらなる高みを目指す。