乗り越えられないハードルはない
試合そのものは3-4のスコアで敗れた。開始早々に先制され、12分には深津が一発退場。3点のビハインドで前半を折り返しながら1点を返すも、交代枠を使い切った直後にMFロメロ・フランクが負傷退場。それでも9人になってから2ゴールを返す粘りに、相馬監督は魂を震わせている。
「当初設定した6位以内という目標を、この選手たちと一緒ならば達成できるんじゃないかと」
ゼルビアがJ1クラブライセンスを交付されなかった理由は2つ。町田市立陸上競技場がJ1基準となる1万5000人以上の入場可能数を満たしていなかったことと、天然芝またはハイブリッド芝ピッチを1面以上有する専用の練習場と設備基準を満たしたクラブハウスを用意できなかったことにある。
前者に関しては2021シーズンの開幕前の竣工を目指して、すでに町田市側がバックスタンドの改修工事プランを進めていた。一方でクラブマターとなる後者は、資金面でなかなか目途が立たない。フロント陣が奮闘するも乗り越えられないハードルがあると、選手たちも感じていたと深津は言う。
「シーズンが始まった当初から、今年は(J1へ)行けない、というのは何となくわかっていた」
それでも選手たちを駆り立てたのは、勝ち進むことで取り巻く環境が変わる、いや、絶対に変えてみせるという一念。迎えた10月1日。IT業界の大手、株式会社サイバーエージェント(本社・東京都渋谷区)がゼルビアの経営権を取得することが決まった瞬間から、風向きが大きく変わった。
ゼルビアのオーナーとなったサイバーエージェントの藤田晋代表取締役社長は、長年の懸案事項だった練習場とクラブハウスに関して「2019年度中に着工する」と明言。ヴェルディとの最終節を観戦した後には、町田市内で目途が立ったことを含めて、さらに具体的に踏み込んだ言葉を残してもいる。
「私たちが参画する前から準備されていた場所でもあるので、あとは資金面の問題だけということであれば、クリアできるということ。まずはJ1クラブライセンスを取得するためにハード面を整えなければいけないのと、戦力面に関しては監督と一度お話をして、どのように考えているのかを聞きたいと思います」