昇格チームながら「放り込み」ではない
1950年代にイングランド1部リーグ(プレミアリーグの前身)を3度制し、70年代にはジョン・リチャーズというイケメンFWが在籍していたが、近年はチャンピオンシップ(2部相当)から抜け出せずに苦しんでいた。12-13シーズンにはリーグ1(3部相当)まで降格した。
そんなウルブスに転機が訪れる。16年7月、中国の投資会社『復星国際』による買収で潤沢な資金を確保。さらに敏腕エージェントのジョルジュ・メンデスをアドバイサリースタッフに迎え、ヌーノ・エスピリト・サント監督、ルベン・ネベス、ルベン・ビナーグレなど、一流どころを補強する。その結果が6シーズンぶりのプレミアリーグ復帰だった。
そして今シーズンはマンチェスターの両巨頭とアーセナルに引分け、チェルシーを2-1で破るなど、17節終了時点で7位と健闘している。
イングランドの場合、下部リーグからプレミアリーグに昇格したチームの大半はロングボールが主流で、ゲームプランよりもパッションを優先する。パッションといえば聞こえはいいが、実質は無為無策。選手のド根性だけが拠りどころだ。とりあえず放り込み、「後はよろしく」。
サム・アラダイス、デイビッド・モイーズ、アラン・パーデュー、ニール・ウォーノック(現カーディフ監督)などが率いるチームを連想していただければ、そのスタイルはおわかりいただけるだろう。
しかしウルブスはビッグ6と対戦する場合はカウンター、同格相手ではポゼッションと、ゲームごとのプランが明確だ。先述したチェルシー戦でも自陣でプレーする時間こそ長かったが、マイボールの際にはパスコースを作りながら前に出て、ロングとショートのカウンターで2点を奪っている。
また、ポゼッションの場合はCBのコナー・コーディが配する正確なロングフィード、MFルベン・ネベスのショート、ミドルのパスが起点となり、基本的にはラウール・ヒメネスが仕留める。
17節終了時点で19ゴール(リーグ13位)は物足りないが、攻めの形はできているといって差し支えなく、プレミアリーグ残留は比較的イージーなミッションだ。