欧州王者の引き出しの多さ
相手を意気消沈させてからわずか2分後、マドリーが一気に試合を決める。クロースが右に展開し、ルーカス・バスケスが折り返す。モドリッチのシュートはミートしなかったが、こぼれを拾ったマルセロが相手のタイミングを外し冷静なラストパス。フリーで受けたベイルが狙いすました左足シュートを突き刺し、ハットトリックを達成した。
鹿島は選手交代とそれに伴うポジションチェンジで活路を見出そうとした。しかし、ペースを落としたマドリーに攻勢を仕掛けたものの、グアダラハラ戦のように流れを一変させることはできない。スムースにボールを動かせず、テンポも上がりきらない。78分に土居聖真が1点を返したが、反撃もここまでとなった。
マドリーは一貫してベイルの左サイドから崩してきたが、その方法は様々だった。スペースへの競争、コンビネーションからの打開、さらに狭いエリアで相手から消えるなど的を絞らせない。ベイルはポジショニングも良く、外に張ったかと思えば中からスタートすることもあった。
右サイドバックで先発した鹿島の西はうまく守れていた。スピード勝負にならないよう距離を保ち、加速を許したとしてもゴールに向かう形は許さない。だが、ベイルに味方の援護が入ると対応の難易度は格段に上がった。
言うまでもなくマドリーは世界最高峰のチーム。ベイルを止めればどうにかなる相手ではなかった。クロースも、モドリッチも、ベンゼマも、マルセロもいた。特にマルセロは相手の注意をひくのが巧く、彼の位置取りによってベイルも動きを変えていた。彼が挙げた3得点のうち、2つはマルセロのアシストだった。
マドリーに力の差を見せつけられた鹿島は2年前の善戦の再現、さらに当時を越える結果を得ることはできなかった。アジア王者として臨んだ常勝軍団は3位決定戦に回るが、勝利で大会を締めくくりたいところだ。
(文:青木務)
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