王者への移籍を決意した飢餓感
自分自身に対して抱き続ける絶対的な自信と、どんなに結果を出しても満たされることのない成長への飢餓感。二律背反する2つの思いを、18日に行われた年間表彰式「2018 Jリーグアウォーズ」で最優秀選手賞(MVP)に輝いた川崎フロンターレのMF家長昭博は、32歳になったいまも胸中に同居させている。
自信に関しては、この言葉に凝縮されていると言っていい。史上5チーム目となるJ1連覇を達成した、11月10日のセレッソ大阪戦後の取材エリア。ピッチ上で無双ぶりを発揮し続けた存在感の大きさから、今シーズンのMVPに相応しいのでは、とメディアから問われた直後だった。
「僕が決められるのであれば、いつも僕をMVPにしますけど。まあ、僕が決めることではないので」
飢餓感に関しては、フロンターレへの移籍を決めた理由に反映されている。大宮アルディージャで自身初の2桁ゴールを達成したのが2016シーズン。揺るぎない居場所を築き上げたはずだったが、それでも家長は延べ9チーム目となる新天地としてフロンターレを選んでいる。
「フロンターレのパス回しやトラップ、ポジショニングというのは、実際に対戦していても細かくて、なおかつ正確で、ボールを奪おうと思ってもまったくできなかった。僕自身は30歳になって、身体能力といったものはもう伸びないと思っている。それでも、パス回しやボールをもらう動きは30歳を超えてももっと成長できる、もっともっと挑戦したいと思ったんです」
新天地で迎えた昨シーズン。古巣アルディージャのホーム、NACK5スタジアム大宮のピッチに先発メンバーの一人として立ち、57分間プレーした開幕戦を終えた直後から、家長の名前はこつ然と消えた。右足親指のつけ根を痛め、手術を受けたと発表されたのは3月17日だった。